コミュ障彼女と警戒彼氏
□やってきたのは、コミュ障少女
3ページ/7ページ
Jodie side
新入捜査官ちゃんがコーヒーでも勝てなかった睡魔に身を任せたのを尻目に、私は彼女の作った資料に目を通していた。
うん、新入りにしてはよく出来ているわね。
良く纏まっている、純粋にそう思った。
「寝てるのか?」
ジェイムズとのミニ会議を終えたシュウの声に、資料から顔を上げる。
「ええ。きっと初日で疲れたんでしょう。
コーヒーも負けちゃったみたいだし。」
シュウは彼女の背中に自分のジャケットを掛けると、彼女の両親を思い出したのか悲しげな表情を見せた。
「彼女のご両親、もう無くなってから10年位かしら。」
彼女の両親は、FBIの人間だった。
組織への潜入中に、正体が露見し殺された。
長官は、一人残された彼女を引き取り、ここまで育て上げた。
たったそれだけだ。
彼女の両親に関する事件に関わっていなかった私にとっては、それだけの事実。
その裏に、どんな悲しい出来事があってどれ位仲間の心に傷跡を残したのか私には分からない。
もちろん、ショックのあまりこの一連の出来事を自身の脳内から消し去った彼女の心に残った傷の深さも。
そんな風に考えていた時、シュウのデスクに置かれたもう一つの資料に気が付いた。
「シュウ、そこ。もう一つの資料、取ってくれない?」
「これか?」
差し出された資料の一番上のページには、
"対象の行動とそれによる現在の状況予測についてのプロファイリング"
と書いてあった。
中を開くと、今回の対象となった憎き相手、ベルモットについての行動プロファイリングと現在何処にいるのかの考察が行われていた。
今までもFBIの人間が散々やってきたプロファイリングだが、彼女のそれには今までと違う考察がされていた。
「ほう、中々面白い考察だな。」
「……そうね。」
そっけなく答えた理由は、決してシュウが面白そうに笑った事に対する嫉妬などではなく、彼女の能力に対する驚きからだった。
この子には、もしかしたら親譲りの才能があるのかもしれないわね。
そう思いながら、真実を知らずにただ幸せそうに眠る彼女を見た。