コミュ障彼女と警戒彼氏

□やってきたのは、コミュ障少女
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「もしもし?天空?」

突然鳴り響く携帯の音が私に無駄な警戒をさせる。
やはり何度聞いても電話の音は苦手だ。
と言うか電話自体苦手だ。

相手の顔が見えないから、相手がどう感じているのかすら判らない。
やらかしても直ぐに気付けない。

コミュ障にとってこんなにも恐ろしい事はない。

「なぁに、明美。あんなに急に電話掛けてこないでって言ったでしょう?」
「ごめんごめん!!」

電話の相手は明美。フルネームで言うと、宮野明美。

私が両親を通して知り合った(と思われる)友人の一人だ。
もう一人、志保と言う少し年下の明美の妹がいる。

明美は気さくで、優しくて、うん。一言で言うと良い子だ。

人見知りの激しい私が普通に話せる数少ない友人の一人でもある。

明美は私より数歳年上だが、あまりそんな感じはしない。


悪い方に年上ぶったりしないし、かと言って幼い訳でもない。年相応の、飾らない彼女の身の振り方が私は大好きだった。

そんな彼女にも、数年前彼氏がいた。

通称、"大くん"。


大学時代は、随分とラブラブだったみたいだが、最近めっきり彼の話を聞く事も無くなった。
別れたのか、ただマンネリ化が進んでいて話すようなことが無くなったのか私は知らないが。


「で、今日は何?」

「バカねぇ、貴方今日何の日か忘れてるでしょ!
天空、貴方の誕生日よ?」

「……そうだったっけ?」

「そうよ!本当に忘れてたのね……。」


今思い出すと、私に自分の誕生日を教えてくれたのは明美だった。

何故かは覚えてないが、一切自分の出生を記憶していなかった私に、パパも把握出来ていなかった誕生日を教えてくれたのは、彼女だった。


「もう、大事な大事な友人の誕生日を祝ってやろうって思ってたのに。それじゃあ別にいらないじゃない。」

「え?え?ダメダメ!!祝って下さい!お願いします!!」

「しょうがないわねぇ、じゃあ今から、何時ものバーに集合よ。志保も連れて行くから。」

「了解っっ!!」


志保は、大学には通っていないみたいで何をしてるのか謎だ。
もしかしたら私みたいに引きニートしてたとか……!

って、無いか。

何時も明美に聞いても志保に聞いてもやんわりと誤魔化されて教えてもらえない。

……危ない職場か。ならば私が志保を救わなければ!!


なーんてバカな妄想をしていると、あっと言う間に何時ものバーに着いた。

ここは、私の家からも明美の家からも近くて、大学時代からお邪魔させてもらっていた。

マスターも常連さんも皆口が堅いし、秘密の話も出来る便利な場所だ。



「マスター、ブルドッグで。」

ブルドッグ、というカクテルは、最近の私のお気に入りだ。

ウォッカベースの、お酒って感じのカクテル。
ほんのりとグレープフルーツの香りがして美味しい。


「ごめん、お待たせ!!」

「ううん、待ってないから大丈夫。」

明美と志保が来て、一気にカウンターに花が咲く。


「貴方、本当に最近ブルドッグばっかり飲んでるわよね。何か理由があるの?」

「へ?ああ、うん。まぁね。」



ブルドッグのカクテル言葉は、

"貴方を守りたい"


明美、私には貴方がもう直ぐ、私の目の前から消えてしまう様な気がするの。

まるで、泡の様にね。

だから、ちょっとでも願掛けになれば、って。
貴方を守れますように、って。



この言葉を、お酒の勢いに乗って言ってしまえば良かったのだ。
そうすれば、結末は変わったかもしれないのに。






























―貴方の人生と言う物語の結末が。
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