コミュ障彼女と警戒彼氏
□やってきたのは、コミュ障少女
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―翌日。
昨日明美と志保に祝ってもらったのは良かったのだが、二日酔いが酷い。
今日が休みだった事が唯一神に感謝したいと思えた。
「……ふぁい、もひもふぃ。」
寝起き&歯磨きの威力、恐るべし(((
「あ、天空??非番の所申し訳ないんだけど、ちょっと本部に来てもらえる?何なら迎えに行くけど。」
「ふぇっ……!?ほっほふぁってふだふぁいよ!
(えっ……!?ちょっと待って下さいよ!)」
真剣に、恐ろしい程の威力である。
遂に通訳が必要になってしまうとは!?
何時までもこのままで話続ける訳には行かないので、きちんとうがいをして応答する。
「え、今日出署しろと。お迎えつきだから、と?」
「うーん、まぁそんな所ね。ちょっと話したい事があるのよ。」
話したい事がある、と言われれば電話じゃ駄目ですか、と言いたくなるのが引きニートの性であるが、就職してしまったこの身、そんな悠長な事は言えないのである。
「……ハイ、了解しました。行きます。その代わり二日酔いなんでジョディさん迎えに来て下さいね。絶対ですよ!?」
そんな一連の会話により、私の二日酔いに浸りながらゆっくりすると言う優雅(?)な休日は水の泡となったのである。
「んで、話って何だったんですか。」
「実はね、私たち明日日本に行く事になったのよ。」
突然告げられたその事実には、言葉も出なかった。
「それで……お前には一人でこちらに残ってもらう事になる。
勿論後で補充の捜査官は入れるがな。」
これだ。
また、これだ。
皆で私を否定する。
私は要らないって。
必要無いって。
一人で待ってろって。
お前は無能だって。
みんなが、私を否定する。
「私は……また一人ぼっち…?」
「仕方が無いのよ、貴方の義父さん、長官がそう「そんなの関係ないですよ!!」でも」
そんなの分ってるよ。
だって、上司からの指示だもんね。
パパは、私の事が大事だから、アメリカに置いておきたいって、そう思って指示したんだよね。
ジョディさんや赤井さんは、それに黙って従うしか方法が無いの、私知ってる。
だってもう子供じゃないから。
あの時、"べるもっと"って呼んでた人が、私の事を泣きながら送りだした意味と一緒だよね。
分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる分ってる。
だけど、だけど。
また一人ぼっちになるの、私嫌だよ。
せっかく、ここで"仲間"って呼べるような人。
"友達"って呼べるような人、作れるって思ったんだよ。
大切な人と、幸せに過ごせる日が来るかもって、そう思ったんだよ。
なのに、また皆私を置いていくの?
そんな思考が私の頭の中を支配している間も、私の目から流れ落ちる雫は止まる由も見せない。
それを見てジョディさんはあたふたしてる。
ああ、また人の事を困らせてる。
こんな奴だから置いてかれるんだ、馬鹿。
止まれ。
もう止まってくれ。
大人に、なったんでしょ?
あの時とは違う。
もう十年たった。
いい加減、
泣き虫から、
人見知りから、
コミュ障から。
卒業させてくれよ。
「いい、ジョディ。ちょっと空けろ。」
「っでも、天空が!」
「いいから。」
何もかもが上の空の私の目の前で、訳の分らない会話がなされる。
ただただ涙が流れ続ける私の頬に、温かい手が触れた。
その手は私の涙をぬぐった。
そしてその手は、身体は、私を、優しく包みこんだ。