コミュ障彼女と警戒彼氏
□一人ぼっちと物語の終点
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有希子さんのお陰か何なのか良く分からないが、ホテルにも恵まれ無事にベッドへと有り付く事が出来た。
「はぁ……。疲れた。」
それが純粋な今日一日の感想。
だって、明美には今日泊めてやれないって言われるし小さい頃にあったって言う私の記憶には無い叔母さんには会うし。
それに闇の男爵シリーズの作家が親戚とか本当に聞いてない。
アルコールでも摂ってストレス吹っ飛ばすかなー。
確かここ地下にバーがあるはずだし。
軽く一杯飲んでこよう。
そのときは、そんな軽い気持ちだった。
あんな事が起こるなんて、私は本当に露も知らなかったんだ。
「マスター、何かオススメのやつ一杯頂戴。」
「ええ、勿論。」
そんな他愛も無い普通のバーのマスターと客の会話のはずだったんだ。
なのに、彼女はここに居た。
居るはずなんて、無かったのに。
いや、無かったとは言い切れない。
きちんと調査した訳ではないし、人間の行動なんて規則性も無いカオスの様なモノなのだから。
「マスター、ブルドッグを。」
凛とした鈴のように美しい声にさらりとした髪。
隣に見えたそれは私が会いたくて止まなかった彼女、明美の声だった。