コミュ障彼女と警戒彼氏

□一人ぼっちと物語の終点
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「何で……?別に大君は関係ないでしょっ……!!」

「私に関係無くても明美を大切に思っている人の一人だって事に変わりはないよ。」

それに、きっと彼と連絡が取れなくなった今でも明美は大くんの事が、








……好きだ。







「だって明美は、大君のことが、まだ好きなんでしょ?」

「……そう。そうよ。だけどね、いくら助けに来てほしいと願っても来てくれないヒーローだっているのよ。

私は、自分が死んだ後彼が組織を壊してくれる、そう信じて死ぬしかないのよ。」

「なんで?無理やりにでも会いに行けばいいじゃん!」

「馬鹿ね、そんな事したら彼の位置をわざわざ組織に教える事になるでしょう?
彼は即刻処分されるわよ!!」


その時の明美の剣幕の凄さは、きっと死んでも忘れられないと思った。

でも、もし明美がこのまま死んだら。




明美の想いも、大君の想いも、何処へ行けばいいの?




二人の想いは通じ合わないまま、終わるの?













ずっとお世話になってきて、親孝行じゃないけど何時か恩返しをと思ってきた。

私が手伝える事は、これぐらいしかないんだ。



明美の心に少しだけ残った「恋心」の後押しをするぐらいしか、私には出来っこないから。






「明美、そのままじゃきっと死んでも後悔するよ。」






押すんだ。





「連絡、しなよ。
どうせ明美のことだから遠慮して今までしてないんでしょ。」




背中を。






明美を見ると、うっすらと涙を浮かべてこちらを見つめていた。



「出来る訳ないじゃん。

だって、大君はFBIの捜査官で、私との関係なんて全部嘘だったんだよ?
そんなに迷惑掛けられないよ。
それに、助けに来てほしい、何て言ったら大君……ううん、秀一さんは絶対に助けに来てくれてしまう。
自分の命まで捨てる覚悟で。」


待って。





秀一さんって……どういう事?


秀一って、赤井さんの名前だよね?
なんでここで赤井さんの名前が出てくるの?




脳内は混乱に陥り、泣いている明美に何の声も掛けられない。

声を掛けなきゃ、このまま明美は行ってしまうのに。




「ありがとう。
応援してくれてたんだよね、今までずっと。」



駄目、行っちゃ。


私を置いていかないで。


また一人ぼっちに、させないで。


昔救ってくれたように、また私を助けてよ。


これからも一緒にお酒飲もうよ。


最後のお酒に何かさせないからさ。











明美に今想いを伝える気がないのなら、残る道はただ一つ。



























明美は、私が必ず守る。


何時か守ってもらったように。







そして、いつでも明美が彼に想いを伝えられるように。



"未来"


を作るんだ。
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