コミュ障彼女と警戒彼氏
□一人ぼっちと物語の終点
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あの後バーを出た明美を、とてもじゃないけど平然とじゃ言えない様な状態で尾ける。
車の彼女に対して私はバイク。
その辺にあったものを拝借した。
緊急事態だ、きっと許されるだろう。
細かいところは重要参考人の保護と言う名目でジェイムズに隠ぺi……じゃなかった、根回しをしてもらえれば、日本の警察からのお咎めは無かろう。
絶対、死なせない。
二度と、私の周りの人を殺さない。
絶対。
絶対絶対絶対絶対絶対絶対。
明美が目指しているのは、どうやら工場地帯の一角で、誰かと待ち合わせろしている様だった。
彼女が車を止めた瞬間に合わせて慌ててバイクも止める。
「来たわよ。これで私と志保を組織から抜けさせてくれるのでしょうね?」
彼女がそう語り掛けたのは、待ち構えていた銀髪の男。
何処かで見たことがあるような気がするのに、思い出せない。
小さいとき、見た……銀髪で、長身で、優しくて……。
優しくて……?
私に優しくしてくれた人……ベルモット?
違う。
もっと、別の誰か。
失われ掛けた記憶を手繰り寄せながら探る。
名前を、思い出すんだ。
ジン……?
そう、ジンだ。
私に優しくしてくれて、銃の扱いから体術まで、何でも出来る人。
そして、何よりも。
―私のことを気に入ってくれていた。
この武器さえあれば、明美は救われるかもしれない。
私が、今駆け出して彼に頼み込めば。
隣に居るヤツはウォッカ。
彼はジンの手下みたいなもんだから問題ない。
「早く妹を出しなさいよ。そう言う約束でしょう?」
「ソイツは出来ない相談だ。
お前の妹は組織内でも随一の頭脳の持ち主。お前と違って組織に必要とされてるんだ。」
「約束と違うじゃない。
まぁ、そんなところだろうと思っていたから、先手は打ってあるわ。お金はここにはない。
別の何処かよ。私がそれを言わなければ貴方達はお金を手にすることは出来ない。
そして、そのお金は妹と引き換えよ。」
十億で、志保を買うって事?
それに、私の知っているジンはもっと優しくて、こう……おおらかな人だったはずなのに。
この十年で一体何があったっていうの?
「さぁ、早く。金の在り処を吐くんだ。」
カチャ。
銃のロックを解除する音がなる。
もう明美に次はない。
だけどきっと、彼女は妹の為に抗い続ける。
「嫌よ。」
「言っただろう、これが最後のチャンスだと。」
出るなら、今だ。
否、今出なければいけない。
銃声が響くその一瞬前に、地を蹴って明美を突き倒した。
「明美を、殺さないで。
殺すなら、私を先に殺して。」
「天空!?何でここにいるの?帰ったはずじゃ」
「良いから明美は下がって。」
そう言って徐に護身用に持っていたトカレフに手を伸ばす。
「何でお前がここに居る。お前の国籍は今アメリカのはずだ。ここに存在するはずがない。
なのに何故……。」
何故?
そう問われれば答えは一つに決まっている。
「大切な人を、守る為。」