main

□事後
1ページ/1ページ

その何というか、鳥子と黒水は一夜を共に致したわけである。


もそもそと起き上がり、それぞれの制服に着替え始める。なんだかんだあって疲れ果て、素っ裸で眠ってしまった二人だった。


(実感ねぇ…)何となく後ろの鳥子を意識するも何故かまともに見られない黒水。鳥子もそうなのかどうかこちらを見る気配がない。
声をかけようと思うのだが、喉の奥に声が引っかかって出づらい。
(ま、いいや。泣き喚かれて嫌がったわけでもないんだ。同意の上ってこったろ)ざわめく自分の気持ちを抑えつけるように、なげやりに結論づける。


(何でこいつは何にも言わねーんだよ!)鳥子の方も気まずさ爆発で、とにかく仕方なく制服でも着るしかない状態だった。(ああ、オレこいつと、よりによって黒水としちゃったってことか?)


「朝飯食うか?」
「お前の情緒は死んでんのか」は?と黒水のこめかみに怒りマークが沸く。二人とも一応制服を身につけて、人心地ついたのか、いつもの臨戦体勢にかかる。朝陽に照らし出されるお互いは、昨日までの相手と何ら変わらず、拍子抜けしてしまう程だ。


「…大体なぁ、お前何でオレなんだよ」鳥子が恨めしそうに黒水を睨み付ける。「はぁ?」黒水は我を忘れて喚きたくなるのを必死で抑えつける。(こっ、こいつ何言ってやがる!)「お前さぁ、好きでもない相手と、その、なんだ、あれ、その、そういうことをだな、軽々しくやっちゃいけないって親か学校で教わらなかったか?ていうか、お前そんな欲求不満なの?」「お、お前なぁ!俺がどんな思いで…」黒水は悔しさの余り、思わず目の前にいる鳥子の手首を咄嗟に掴んでしまった。「!」黒水に触れられた瞬間、鳥子の頭に昨夜からのことがフラッシュバックしたように、いくつかの場面が閃いてしまった。鳥子の顔にカーッと血が差し耳まで真っ赤になるように昇ってきた。それを見た黒水も記憶が伝染したかのように、自分が鳥子に何をしたのか沈黙の内に晒され、黒水の顔もみるみる間に真っ赤になる。「は、離せよ…」「あ、ああ、悪い」
黒水が柄にもなく謝罪の言葉を口にしてしまい、鳥子は昨夜のことが急に本当のことと実感が湧いてきてしまいいたたまれなくなってきた。「バカ!謝んなよ、気持ち悪い!」「ん?あ、ああ」黒水は未だ冷めぬ火照った顔で、鳥子の口にしたいつもなら素早く鉄拳が飛びそうな言葉など何を言われたか分かってないのか上の空だった。鳥子には、それが余計に恥ずかしくて、昨夜の自分が今、黒水の脳内で再生されてあるのかと思うといてもたってもいられない恥辱の的だった。(なんなんだよ、何だよ、これ!)(こんな恥ずかしい思いするのに、何でオレは…こいつを受け入れちまったんだ!)「…結婚すっか」見ると真顔で黒水がこっちを見てる。!?!今度は唐突なプロポーズをかましてきた。「するか、アホ!」二人の泥仕合は、まだまだ続くのだった…
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ