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□プレゼント
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シルバは胸に抱いた千円札をギュッと握りしめ、(純さまに何を贈って差し上げよう)プレゼントを渡す表情を想像するだけで胸がいっぱいになる。(やっぱりお花かな?それともアクセサリー?純さまの黒髪に映えるような…)ぼーっと立ち止まっていたせいか、後ろから来た人にどんっとぶつかられる。「あっ」衝撃の拍子に手にしていた千円札を手放してしまう。「悪い!」ぶつかった相手も慌ててシルバの肩を掴む。「お金が…」「あれ、アンタ…」目の見えないシルバは、それどころでなく、しゃがみこんで地面を探る。(純さまのプレゼントの大事な資金…!)「はい、コレだろ。悪かったし」地面とは見当違いな方向を探していたシルバに、ピンクと白と緑の三色に染め分けた髪の少女、桃ハルカが千円札をその手に握らせる。「生徒会の書記がこんな所で何してるし」シルバは透き通るような白い肌をほんのり赤くさせ、「あなたには関係ないことです」と言い放つ。「おまさ」ハルカが言う。「ビンボなの?」シルバが言い返そうとした時、そこ
へ「ねぇねぇ二人何してんの?」と割って入ってきた男が二人。何せハルカは読者モデルをつとめるほどの容姿。シルバはウェーブのかかった長い白い髪に白い肌、まるで西洋人形のような可愛らしさである。そんな二人が連れ立っているのだから、ほってはおく方法がない。しかし、その手の誘いに慣れているハルカは、しっしっ、と手を振ると「うちら、これから買い物するし、うるせ」シルバの背中を押すと、その場を立ち去った。男たちの舌打ちを背に、「あんな人たち、あなたの手を借りなくても追い払えました。大体あなたと私が買い物をするとはどういうことですか」「んなの適当だし、てか、あんたと買い物するの面白そうだし」ハルカがニヤリと笑う。「彼氏?」「そんな低俗なものではありません」「てか、あんたこの辺詳し?うちなら、プレゼント選びに、おまの予算にぴったりの場所とか知ってるし」シルバの眉がピクリと動く。(純さまに喜んで頂けるもの)「…それは、どこにあるんですか」「おせてやってもいーけど、その目じゃプレゼント選びは無理じ
ゃね?うちなら時間空いてっけどな〜」お高くとまっているシルバがジリジリしてるのが面白くて、やめられないのだが、ちょっと意地悪な気がして、「また、さっきみたいな男が寄ってくるし。行くし」やや強引にシルバの手を引っ張る。「しようがありません、連れて行きなさい」ぶつぶつと小声で呟いた。


「じゃーん、どうだし!」目の見えないシルバはそう言われてもリアクションのしようがないのだが、ハルカは得意気に手を引っ張って右へ左へ連れ回したシルバに話しかける。「ここにあるのは、ぜーんぶ390円だし!おまは、んなの欲し?」「390円!?」(二つ買ってもおつりがくる…でも、そんな安物で純さまは喜んで下さるかしら…)シルバの戸惑いを察したのか、「ここは正規品とか余ったものを大量に買い取ってるから品質は安心だし」「美しいもの…」シルバはポツリと言った。「純さまの黒髪に映えるような美しい髪飾りが欲しいのです」気難しいシルバにしては、素直に喋ったものだった。「純さまって星野純?んだ、生徒会長にか」「呼び捨ては、おやめなさい。純さまです」店内は年頃の女の子で賑わっている。「ハイハイ」


二人はあーでもない、こうでもない、と品定めをした。最初に根を上げたのは、ハルカだった。「だっーじゃあ、どんながいんだっての」「だから言ってるではありませんか!純さまの御髪に映えるようなものは、その辺のどこにでもあるようなものではないのです、例えばっ」と、隅にあった商品を掴み取る。それは、二人がまだチェックしてなかった芍薬の幾重にも花びらが重なった白からピンクへ仄かに色づく華やかな髪飾りだった。ハルカが「レじゃん!」ハルカの大声にビクッとしたシルバに、ハルカが勢いよく髪飾りの形状を説明してやる。シルバは、純がその髪飾りをつけた時を想像してぽうっとなってしまう。「それなら…これにいたします」「っとかよ」レジを終えたシルバがハルカの元に戻ってくる。「じゃ、うちはれで…」「…」シルバは無言で何か言いたげにもじもじしている。「に?さか、まだ迷ってるとか…」「助かりました。生徒会はあなた方を認めたわけでは、ありませんが、今回のことは別に礼を言います」ハルカはポカンとしてから、ニヤッと笑う。「けっこ
、素直じゃん」「今回、だけです!」パッとシルバはハルカの前から立ち去ってしまう。何となく、シルバが純にプレゼントを真っ赤になって渡す所を想像してしまうハルカだった。
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