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□骨折
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「鳥子っ、骨折ったって本当!?」病室のドアをたたき壊さんばかりに飛び込んできたのは、黒髪の美少女、虎湖。「おーホント」青い髪の少女は、ギプスで固定された左足を吊るされ、つまんなそうに手を上げた。続いてハルカと小松も病室に入ってくる。「びっくりしましたよ〜」「アホでも、骨折れるし」ダルそうに髪をかき上げる。「ごめんね、ごめんね鳥子、私授業中で鳥子がそんな酷い目に遭ってるなんて気付きもしないで」ベッドにすがりつき、鳥子の手を取り涙ぐむ。鳥子はバツが悪そうに「まー、目算10メートルあるから平気だと思ったんだけどな、20メートルくらいあったらしい」「飛び降りたんですか!?」小松がギョッとしたように叫ぶ。「鳥子…なんで、そんな馬鹿なの…」「そいつのバカは今に始まったことじゃねぇだろ」かばんを後ろ手に黒水が入ってきた。「よく、骨一本ですみましたね…」小松が病室の椅子を人数分用意しながら言う。「虎湖、いい加減に手ェ離せって…」「いや!今日は私、ここに泊まる!」「っせて、アホがつるわ」「学年一、二を争うアホに言われたくねーよ」「れより、レ、りてーことんのよ」ハルカはスカートのポケットからマジックペンを取り出して、ポンっとキャップを抜くと、鳥子のベッドの上に身を乗り出すと、ギプスにアホ、とくっきり書いた。「面白そうじゃねぇか」黒水がハルカからペンを取り上げる。「おい、こら、お前ら何しに来たんだ」「校舎の屋上から、鳥の巣を元に戻そうとしたイカれた野郎の顔を見に来たんだよっと」ドクロマークをキュッキュッと描き上げると、小松にペンを渡す。「あっ、あたしはいいですよ!」「こうした方が早く治るってジンクスがあるらしいぜ」黒水はニヤニヤしている。「え…?じゃあ」小松は至って真面目な顔で、゛早く治って下さい゛と書き込んだ。「鳥子…やっぱり、あなた優し過ぎるのね…小鳥のために、そんな」「ホラ、帰るぞ」黒水が見るもの見て飽きたのか、早々に立ち上がる。「じゃ、鳥子、私一度泊まる支度してから、また来るから…」「泊まらんでいい」「それに病院といえば幽霊が出るかもしれないからね!」鳥子の言う事を全く聞いてない虎湖が拳をギュッと握りしめる。「幽霊…?」意外なところで黒水が反応を示す。「見にきてやってもいいな」「は?」「なんかお泊まり会みたいで楽しそうですね!」小松が目をキラキラさせる。「隣のベッドも空いてるみたいだし…ハルカさんも泊まりませんか!?」「んで、レがっ」しかし、グッと小松に腕を取られ、押し切れられそうだ。「あなた達!無理に泊まる必要なんてないのよ!」せっかく鳥子と二人きりになれるチャンスを目算していた虎湖が強目に否定してくる。「駄目だと言われると余計そうしたくなるのが人情だよなぁ。じゃ、決定だ」黒水が言うと、小松がわーい、と歓声を上げる。「お前らなぁ…」鳥子は盛り上がる面々を前に言葉を失ったのだった。
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