main

□ピザ食べ放題
1ページ/1ページ

「ヌーキーズのピザ食べに行こうぜ」鳥子の提案で一行は、ピザ、パスタ、フライドポテトの食べ放題が売りのアメリカン・ピザの店にランチを食べに行くことになった。一同は店に入り、会計を済ませ、店員にテーブルまで案内された。そこで、席につくことになったのだが。「じゃあ、座ろうぜ」と言って鳥子は、奥のソファの左側に座った。「そうですね」小松も、その隣へと。「ちょっと待って」冷たく響く虎湖の声。「なんでそこは、当たり前のごとく並んで座っているのかしら?」虎湖としては、自分が鳥子の隣に座っているのがデフォなわけで、小松がそこへ座る、というのは今までのプライドが許さないわけで。すると鳥子が、そんな虎湖を見て、「なんだ、そんなことか。ったく、しようがねぇなぁ。おい小松」虎湖は思わず、にんまりして、「そうそう、鳥子の隣は私…」「こっち」鳥子は、ぱんぱんと自分の膝を叩き、示すと、「じゃ、お邪魔します」と、小松も、あうんの呼吸で、よいしょ、と鳥子の膝に足をかけ、すとん、と鳥子の膝の上に、ごく自然にちょこんと乗った。「これでいいだろ」実に力みなく言い放つ。虎湖はさっきの表情も一転、固まったように目を見張って、肩をプルプルと震わせている。辺りには、ピザのいい匂いが漂っていた。「あ、あんた達ねぇ…!何の恥じらいもなく、破廉恥な行為を…よくも私の目の前で…少しは遠慮というものをしたら、どう!?」鳥子と、鳥子の膝に横に座った小松の二人は、きょとんとした顔で虎湖を見つめている。「駄目、駄目、だめぇええ!鳥子の隣は私!膝の上に乗っていいのも私!私でも乗ったことないのにィ!」普段のクールな優等生の顔は、どこえやら、泣きそうになりながら、地団駄を踏んでいる。「おい、早く飯食いてぇ」その様子を格段、何事もなかったように見ていた黒水が、全く意に介さず発言する。「うわーん!駄目ったら、駄目なの!鳥子の隣に座るのは私!膝の上に乗っていいのも私だけなの!ていうか、乗りたい!」「うるせぇな」黒水は駄々っ子のように泣き叫ぶ虎湖の肩をぐいぐい押し、鳥子と小松のワンセットの席の隣へ押しやる。鳥子と小松はワガママ爆発の虎湖を見ても、今の姿勢を虎湖に譲るという発想を思いつかないらしく、グスグス言いながら、それでも、鳥子の隣には座りたいのか、その席に収まった。「じゃ、レ、ピザ取ってくるわ」ハルカも、この風景が格段おかしいとも思ってないように、このいらない下りを眺めていたが、自然と黒水の隣に座ることになったことも気にする風もなく、席を立つ。黒水も残る必要もないと思ったのか、自然と立ち上がり、ピザが置いてあるコーナーへと向かった。まだ癇癪を起こした後の虎湖はしゃくり上げ、絡み合った女子高生二人を残し、昼下がりのピザ・レストランは実に、美味しそうな匂いを漂わせているのであった。
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ