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□JK
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雨の中、二人の少女が傘をさして道路端で立ち話をしている。(あら?鳥子と小松さんじゃないの?)偶然学園の門から、通りかかった虎湖は足を止めた。二人は何事か話すと、キャッキャッと笑い声を立てる。明るく声をかけようと振りかけた手が止まる。(何よ、浮気の現場を押さえたわけでもないのに)何で私がためらわないといけないのよ、と理不尽な思いに捕らわれる。でも、二人を見過ごすこともできずに立ちすくんでしまう。二人は虎湖に気付くことなく、夢中でおしゃべりしているようだった。(こんな雨の中なのに、そんなことも気にならないくらい楽しそうね。あんな年相応な鳥子を見るのは初めてかもしれないわ)虎湖の手が傘の柄をぎゅっと握る。鳥子は一匹狼のようなタイプで、人と群れることをよしとしない。そんな所も虎湖は大好きだった。もちろん、鳥子は虎湖とも話はする。でも、そんな時でも、会話のモチベーションは虎湖の鳥子に好意を寄せる虎湖の熱意によるものが大きかった。二人は制服に身を包み、傘で、その表情はよく見えなかった。それでも、道端で偶然顔を合わせ、着替える間も惜しんで、二人の会話に没頭してる少女たちの気持ちに添えない自分がいた。(なによ、鳥子。それじゃ普通の女子高生じゃないの)うじうじして、ふてくされていく虎湖。「おい、邪魔なんだよ」そんな虎湖の後ろから、声をかけてきたのは黒水だった。「なんちゅー顔して見てんだ。百面相か?」ふり返ってみると、黒水とハルカという珍しい組み合わせの二人が、呆れた顔で虎湖を見ていた。「うっさいわね、ほうっておいてちょうだい」「あっそ、なら構わねぇけどよ」「ーい!この二人!」ハルカが手を上げ、横断歩道の向こうの二人を呼びかける。「傘忘れたから、入れてくんね?」ハルカの声に、小松がいち早く反応し、鳥子の肩を叩いて指差している。「そうよね…私が遠慮する必要なんてないんだから」虎湖は、もやもやを振り切るようにして、「はい、私の傘、貸してあげる。私は鳥子の傘に入ればいいから」黒水に自分の傘をずい、と押しつけると、「鳥子〜傘忘れちゃったぁ〜入れて〜」と早くも横断歩道を駆け足で渡っている。黒水は「変わり身早すぎるだろ…」と手渡された傘を持っていた。「あっ、虹です!」叫んだのは小松だった。雨は弱くなり、小松の指差す方向を、それぞれが眺めると、空に弱々しく虹の橋がかかり始めていた。「うん、もう鳥子〜傘に入れてよ〜」「だってもう雨降ってねぇじゃん」鳥子の傘の下で、傘をしまおうとしている、その肩に肩をすり寄せている虎湖。ハルカは肩をすくめ、黒水は付き合いきれん、と言わんばかりに舌を出して、横断歩道を渡り始めた。
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