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□バースデー
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「明日さぁー、オレの誕生日なの。へへー」「えっ、そうなんですか!?おめでとうございます!!」「だからさー、祝って祝って?」鳥子は机にもたりかかりながら、ニヤニヤしている。「じゃあ、あたしケーキとか作ってきちゃいますね。気合い入れて!」(虎湖さんとかすごいもの贈りそうだな…)「ていうか、もう前日だから、イヴっての?VIP待遇で頼むわ」「え?今からですか?」鳥子の子供っぽさに、思わず笑ってしまう。「たりめーだろ!一年に一回しかないんだぞ。今、祝わなくて、いつ祝うんだよ」「そ、そうですね…あの、具体的に言うと、どんな祝い方をすれば?」「おう!まぁ、お前は言わば、オレの誕生日初心者なわけだから、オレがリードしなきゃ分からないよな!そうだな、例えば、お前はオレの言う事は無条件に聞く!とかだな」(鳥子さん、ジャイアンみたいだな…)また更に笑いが込み上げてくる。「そして、オレの事を全力で祝う!それは、もう言わずもがな、だ。その辺は、お前も察しろ?」「はぁ、なるほど」「気持ちが大事なんだ、気持ちが」ムクリ、と起き上がり、腕を組んで、頷きながら、びしっと人差し指を小松に突きつける。「気持ち、ですか」「早速だが」「はい」「数学のノート写させてくれ。さっきの時間爆睡してしまった」「そんなことでいいんですか?いつもと変わらないじゃないですか」「いいんだよ!とにかくオレが言うことはすべて!あと昼飯はお前が買ってくるだろ?とにかく面倒くさいことは、オレにやらせちゃダメなの!」「ああ」数学のノートを差し出しながら、(鳥子さんて寂しがり屋さんなんだな)くすりと微笑んでしまう。「お前の誕生日は?」「え?あたしのですか?」「そ」「3月の31日ですけど」「なんだ、もう過ぎたのか。まぁ、来年のその日を楽しみにしとけよ」鳥子が自分との関係を来年まで続くことに何の疑いも抱いていないことが、何だか嬉しかった。「たっんじょび、たんじょっび〜」リズムも外れているメロディーを口ずさみながら、数学のノートを写し始めている鳥子。「あっ、そうだ!明日は虎湖が盛っ大にオレの誕生日パーティーを催すから、予定空けとけよな!ま、プレゼントなんか何でもいいから気にすんなよ、何せ小松はオレの誕生日ビギナーなんだからな」て、また小松が誕生日初心者であることを強調する。「あっ、でもケーキは必ず作ってこいよ」と、またノートの書き写しを再開したかと思うと、また振り返り、「ていうか、お前、今日泊まりだわ!」「へっ?」「オレの寮の部屋。もう外泊届け、お前の名前で出してあるから。ケーキも、そこで作れよ。ああ、楽しみだなぁ〜」完全に浮かれている。「えっ、いつの間に!?」小松は全く知らなかったので、鳥子の自分の誕生日にかける熱い思いに面食らった。(単なるイベント好き…?)小松は今度の自分の誕生日に何をされるのかと思うと少し心配になった。「じゃあ、授業終わったら、着替えとか材料の準備してから行きますね」「おう、そうしてくれ。いや、ちょっと待てよ、どうせ虎湖のやつとかが買い出しに行くから、お前も同行しろよ」どうにも、イベント感を出したいのか、小松を一人でいさせない気でいるらしい。「じゃあ、着替えだけは、取りに帰って3時に校門前に集合な」「あの、そういえば、虎湖さんが来るということは…」「ああ、ハルカと黒水も来るぜ。黒水なんかは、どうせ飯目当てだけどな」まだ、あまり話したことのない二人が来ると聞いて、緊張してしまう。(うん、でも、鳥子さんが、こんなに嬉しそうな誕生日なんだ。お世話になってるし、喜んでもらえるようにしたいな)それに、確かに一晩鳥子といられるのも、楽しそうだ。小松は、どんなケーキを作ろうか、あれこれ考え始めた。
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