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□花火。
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ドンドンパンパン鳴る花火が、今日の夏祭りの終わりを告げる。
「やっぱり綺麗だね…花火」
「あ、あぁそうだ、な」
こういうとき、きっと「君の方が綺麗だよ」みたいなこと言うべきだろうけど。
……へたれな俺にはできない話。
今日、こうやって優衣を夏祭りに誘えただけ、大進歩。
花火はもうラストスパートに入っている。
大きくて見事な花火がまた打ち上がった。
「ね、カラ松くん」
「ん?なんだ」
「…また見ようね、花火」
彼女に顔を向けると、花火に照らされた横顔が見えた。
「もちろんだ、優衣」
嬉しそうにこっちを見て、彼女は笑う。
ただ、そのあと顔が曇った。
「カラ松くんは、」
「ん?」
「好きな人、いるの?」
「……、」
また花火を見始めた彼女は、ぽつりと言葉を漏らす。
その問いは、俺には答えられない。
なぜなら……。
「なに言ってるんだ、君には彼氏が、」
そう、彼氏。
優衣には、サッカー部の彼氏がいるんだ。
「うん、だから、君の恋を応援したいなって」
「お、俺はッ…」
"君が好き"
その言葉を飲み込む。
俺に入る隙間はないだろ、優衣?
「……ッ、好きな人はいないんだ、」
「そっか、」
そのとき、花火が終わった。