★Novels……★

□First Love
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聞いてはいたけど突然だった。

「あのね〜、ビーデルお姉ちゃん来てるんだよ〜」

悟天の言葉に半分は興味。
残りの半分はあの嘘吐きチャンピオンの娘の顔を見ることだった。

でも、そう言うとは自分でも意外だった。

「じゃぁ、行こうぜ!」
「うん!ビーデルお姉ちゃんいい人なんだよ〜!」

悟天は世界チャンピオンだの救世主が誰だの気にしない。
だけどパパが「あんなのは屑だ」と偶に漏らすので気になった。
ママでさえ「あれはないわね〜」と言ってるくらいだし。
まだ舞空術に慣れていない悟天に合せながら飛んでいくと、二つの影が見て取れた。

「にいちゃ〜ん!!ビーデルお姉ちゃ〜ん」

悟天は元気に二人に声をかける。
当然、ビーデルも振り向く。

「お〜、悟天!」
「悟天く〜ん、こっちこっちぃ〜!」

え?
あの人が?

「か…可愛い…」

つい出たセリフに自分でもびっくりした。
あの男の娘にしては可愛い。
さっぱりと清潔感があるショートカットの黒髪。
アパタイトの様な瞳。
と思ったが、違った。
あの瞳に映るのはそんな柔らかい鉱石じゃない。
意志の強さが宿っている。
あれは、サファイアだ。
強い意志と強固な想いが宿っている。
戦いを知る瞳だ。
それに桜色の唇。
白いシャツにピンクのタンクトップ。
動きやすさを重視したのか黒いスパッツにトレーニングシューズ。
男のような恰好なのに何故か『女の子』を漂わせる。
ミスター・サタンとは似ても似つかない。
精々、黒髪位だ。
でもビーデルはちょっとだけくせッ毛で、ミスター・サタンは天然パーマだ。


今更だけど、気が付いたのは『地球人』としては強い気。
然も、昨日、一昨日習い始めたのに浮いてる!
俺でさえ舞空術はなかなか手こずったのに!

「こっち〜」
「お姉ちゃ〜ん!」

ぼふっ

悟天は飛んでた勢いで、ビーデルの胸に飛び込む。
甘えっこ炸裂だ。

「わ〜い!」
「も〜、いきなり飛び込んじゃ吃驚するじゃない」

そう言いながらも、ビーデルは悟天を抱き、ぎゅ〜っとする。

しゅぅ

ん?
何だか嫌な気を感じた。
悟飯さんの方からだ。
え?
あの、何だかとっても嫌ぁ〜な空気なんですけど……。
と言いながらも俺も一瞬、悟天にいらっときた。
何でだろう?

「今日はね〜、トランクス君も一緒なんだ〜」
「え?あ、私はビーデルよ。えっと、あなたは…」
「あ…と、トランクスです……」
「よろしくね、トランクス君」

満面の笑み。
うわ。
もしかして、もしかしなくても、やっぱりこの人、可愛い。
うん。
認める。
この満面の笑みに見とれた。
素敵だと思った。
学校で女の子は居るけど、それとは違う。
なんていうのか、気は強そうだし、快活そうだし、でも笑顔は素敵で、武術をしているのに手入れの行き届いた髪、動きやすさを重視しながらも女の子を忘れていない服装、多分察するに正義感も強そうだ。
あ、『女の子』じゃないんだ。
『女の人』なんだ。
正確に言えば学校の女の子は『幼女』。
ビーデルはその階段を上がり『少女』になっているのだ。
だから違うんだ。

「いい加減に離れろ、悟天」
「えぇ〜〜」
「離れなさい!」

べり

と言った感じで悟飯さんが悟天を無理やりビーデルからはがす。

「うわ〜ん!ひどいよぉ!にいちゃ〜ん!」
「ビーデルさんに迷惑だろ」
「そんな、私なら大丈夫よ」

弟がいるみたいで嬉しいし、なんて呟。
うん、それはいいけどまだ悟飯さんから黒いオーラが……。
然し、悟天とビーデルは気が付いていない。
あ〜、そのスルー機能、俺も欲しい!

「あっと、トランクス君よろしくね」

すっと差し出された手を何も考えず握った。
しまった!
と思った時には、時はすでに遅し。
先ずは屈託ないビーデルの笑顔。
握った手は思ったよりずっと小さく、柔らかい。

「トランクス?」

ご飯の声にビックっとする。
ああぁ〜〜〜〜。
オーラが!
黒い…
否もはや、どす黒いオーラが……。
然し気が付かない人は気が付かない。

「悟飯君?どうかしたの?」

不思議そうに悟飯に視線を向けるビーデル。

「ん?そろそろ修行、再開しましょう。」
「え?えぇ、そうね」
「で、トランクス。何時までそうしてるんだ?」
「は、はいっ!」

パッと握っていた手を放す。
こ、怖い…。
こんな怖い悟飯さん、初めてだ。

「?」

ビーデルと悟天は不思議そうにしている。
この絶対零度の空気に気が付いてよ!
けど、長々と握手したことは誤らないと。

「ビーデルさん、ごめんね」
「え?なにが?」

ビーデルは怪訝そうにする。
彼女にして見れば、異様に熱烈なファン(少しキモチ悪いと友人に漏らす)が、それに比べればこんな握手は爽やかそのものだ。
だからビーデルは全く気が付いていない。
ここにいるのは悟飯、ビーデル、悟天、トランクスの四人。
まだまだどす黒いオーラの悟飯。
きょとんとしているビーデル。
悟飯に首根っこを掴まれてる悟天。
気恥ずかしくしつつも悟飯にビビるトランクス。
この中、現状を把握しているのは悟飯とトランクスだけだろう。
一番気の毒なのは、ちょっとした興味で来ただけなのに、見たこともないほどの爽やかな笑顔で絶対零度のどす黒いオーラの中にいるトランクスだ。



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