★Novels……★

□君の名は……(校正中)
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卒業式。
その日は春麗らかに晴れ渡っていた。
今日、この日から彼女はめでたく憧れのあの人と同じ高校生に成ることが出来る。
そんな日だった。
ミルクティー色の髪をお気に入りのピンクのリボンで後ろに少し結い上げている彼女の名は、吉永サリー。
美少女と言っても過言ではない。
しかし、彼女が美少女らしからぬ所は、それを自覚していないためと、大人しい性格の為だった。
卒業式のためにキチンと糊を効かせた制服を着て、友達と三人仲良くはしゃぎ合っていた。
しかし、実際には心ここに在らず、だ。

(舞人さん…遅いな…)

サリーの待ち人は中々現れない。
昨日の電話では「必ず行くから」と、言っていたのに…。
あの人がそういうなら、絶対に来るって思ってはいるが、やはり少し心細い。
まさか何か有ったのか?
でも、きっと遅れてでも来る。
彼は約束を破る事などない。
そんな人だ。
少しソワソワしているサリーに友達は声をかける。

「せっかく、エスカレーターで上の高校に行けるのに、サリーったら外部を受けるなんてねぇ?」

「あ〜ん、寂しいよぅ!!サリー、絶対に遊びましょうねぇ」

「う、うん」

友達の言葉に笑いながら答えるサリー。
そこへ制限速度ギリギリで向かってくるバイクがあった。

キキィ〜ッ

高いブレーキ音を立てながら、中学校の前に停まる。
乗っている人物はサリーが待ち望んだ人であった。
被ったヘルメットもそのまま。
そして服装は学生服だった。
赤いバイクに、赤いヘルメット。
それに学生服は少し浮いていたが、当人は気にはしていなかった。

「サリーちゃんっ!!」

「ま、舞人さんっ!」

運転手は声をあげて、サリーに近付く。

「遅くなってゴメン!」

「いえ、良いんです。来てもらえただけで十分です。」

舞人の台詞にサリーは嬉しそうな顔で答える。

「サリー…、ありがとう」

「いえ、そんな…」

二人がやり取りしてるとサリーの友達の一人が、あっと口に出した。

「旋風寺舞人ぉ〜!!っあ、さん?!」

慌ててさん付けする。

「こんにちは。ご存じの通り、旋風寺舞人です。君達は、サリーちゃんの友達かい?よろしく」

爽やかに自己紹介する。
しかし、旋風寺舞人ですと言っただけで周りはざわめく。
旋風寺舞人といえば世界有数の大金持ち。
その上、旋風寺コンチェルンの若き総帥でもある。
その上、眉目秀麗、頭脳明晰、スポーツ万能と三拍子そろっていれば当然。
そして内密ではあるが、勇者特急隊でもある。
だが、騒がれ慣れている舞人は気にせず、サリーに向き直った。

「はい。サリーちゃん、卒業おめでとう。そしてようこそ、我が高校に!!」

満面の笑みでそう言って、舞人がサリーに差し出したのは赤い薔薇とカスミ草の花束。 大輪の薔薇は堂々と咲き誇り、小さなカスミ草はそれに添うように咲いていた。
何とも言い難い出来の花束だ。
良いか悪いかで言えばとても良い。
赤い薔薇は舞人のように凛々しく、小さく咲き誇るカスミ草はサリーのように楚々と咲き薔薇の花を引き立てている。
 そう。
この花束はまるで舞人とサリー、この二人を表しているかの様であった。
 遅れて来たからもあるが、何処に居ても注目を集めてしまう舞人。
たとえそれが、地味で極まりない学ランだとしても、彼は目立つ存在。
そう。
それはまるで花束に堂々と咲く、大輪の赤い薔薇だ。
そして、それを引き立ているかすみ草はまさしくサリーの様だ。
普段は目立たず、相手を引き立てる。
だが、それだけで花束にすれば、まさに清楚で爽々ながら可憐に咲き誇る。
 舞人として、別にそれを狙っていたわけではない。
ただ『サリーに贈る』となると、ついつい、力が入り、そうなったの結果がこの花束だった。

「ありがとうざいます、舞人さん…」

サリーはそれを頬を染め、受け取る。
まさかこんな花束が貰えるとは、思ってなかったからだ。

「それと、これが本命だよ♪」

 そう言って差し出されたのは、大きめの包み。
縮緬、セロファンで包まれた薄いピンクのツツミだ。
赤と白の桜色のリボンで放送されている。

「これは…?」

「いいから、開けてみて」

サリーは舞人に促されるまま、開けた。

「これって…」

「そう。サリーちゃん用だよ★」

包まれていたのは、舞人の何時も被っているヘルメットとの色違いの物。
色は、サリーに合わせてか、桃色だ。
本体自体の色は桃色だが、耳あて等は舞人の物と同じ色だった。
正しく、色違いのお揃いだ。
その事に気が付いたサリーはそれに頬を染める。

(これって、舞人さんとお揃い…)

そんなサリーの事に気が付いて、舞人も何ともなしに照れが入る。
しかし、それを振り払うかのようにして、舞人は言う。

「早速で悪いんだけど、じーちゃんがサリーちゃんを連れて来いって煩いんだ。」

「おじい様が…?」

「うん。だからソレをかぶって家に来てくれないかな?」

 舞人のエレキバイクは排出量的に言えば500ccある。
十二分に二人乗りが可能だし、そう設計もされている。
元々、舞人一人の為に作られたものだが、後々の事を考えての設計だったのだろう。
 そして舞人の祖父はサリーが大のお気に入りだ。
初めて会ったのはサリーがバイトした喫茶店であったが、『初恋の女子と同じ名前じゃ!』と言われたくらいだ。(本当か嘘かはわからないが)
舞人が旋風寺コンチエルンの総帥だと知らずに、舞人に好意を寄せたのも、大きい。
しかも、其を知っても、舞人に対して態度を変えたりしないサリーに、裕次郎はかなりの好感を持った。
普通ならば、知った時点で媚びへつらうのが当たり前だったが、サリーは舞人に対しての好意は表しても、旋風寺コンチエルンの総帥の『旋風寺舞人』に対しては『頑張って下さいね』位にしか思って居ない。
其処が更に裕次郎の好感を得たのだろう。
その為、クリスマスなど、事有る事に家に招かれ、サリーの方はいつも恐縮していたりする。
そう言うサリーの方も自分の魅力に気が付いていないが清楚で可憐だ。
サリーは女子高だから、気が付いてはいないが、近隣の中学校では話題になっている。
その楚々とした可愛さと、可憐さが要因の一つでもあるが、本人は気が付いていない。
其れがサリーの、サリーたる所以かもしれないが…。
その上、気も付くし、やるべき事はきちんとこなす。
一部の下級生には『憧れの先輩』と言われ、噂されるくらいだ。
バイトで忙しくさえなければ、生徒会長も断らなかった。
学級委員長さえも、事情を知る友人が引き受けなければ、満場一致でサリーに決まっていただろう。
何だかんだと人望の厚いサリーだった。

「さぁ、サリーちゃん。行こう!」

そう言って手を差し出す。
サリーの方は何故そんなにも裕次郎に気に入られているか分からないが、うれしかった。
バイト先での励ましや、招待をされることは、気に入っていられる証拠のような気がする。
今日の招待もうれしいくらいだ。
旋風寺コンチェルンは世界に通じる会社だ。
その総帥にあたる舞人に、自分は不釣り合いなのではと思うこともある。
然し、舞人の父、旭もそうだったが、どうやら舞人の家は血筋に拘らないらしい。
舞人の母、ルリ子も良い所のお嬢様だったらしいが、祖父はそんな事にはこだわらなかった。
そこらへんは自由なのだろう。

「ほら、遅れたら俺がじーちゃんに文句を言われるんだし」

「は、はい!」

舞人としてはお茶目で言ったのだが、サリーは自分のせいで裕次郎に文句を言われては大変だとばかりに、その手を取る。

「じゃぁ、皆、またね!」

サリーは振り返り、友人に挨拶する。

「う、うん…」

あまりの出来事に生返事するしかない友人に気が付かず、舞人のエレキバイクに腰掛ける。
二人がエレキバイクで去った後、校門前では騒ぎになった。
当然と言えば、当然だ。

「確かにサリーに想い人が居るとは解ってたけど…」

「確かに知ってたけどぉ、まさかの両想い〜!」

「相手って旋風寺舞人!」

「吉永先輩すごい…」

「でも、以外にお似合いだったり…」

「相手スゴすぎ!」

等と言った感じだ。
サリーも、舞人が旋風寺コンチエルン総帥だと知り、身を引こうとした。
だからこの反応は当然すだ。
親友も、サリーは舞人との事は話てない。
話せば、勇者特急隊の事も露見するからだ。
だから、二人の関係を知る者は少ない。
舞人の親友、秘書に執事、祖父ぐらいだ。
しかも、全員が勇者特急隊の事は知っている。
最悪な敵と闘った時には周知の事実になっていた。(とは言っても、この時点で舞人とサリーは付き合ってはいなかったが)
何だかんだと言いながら、舞人は少し奥手なところもあり、闘いを終えた後に付き合いを申し込み、サリーも真っ赤な顔でそれを受け入れた位だったりする。
なんとも馬鹿馬鹿し…いや、微笑ましい二人だ。
今回のプレゼントも、舞人の姉的存在の秘書にあれやこれやと指図…もとい、助言を貰い決まった。
プレゼントはヘルメットと決めていたが、色やラッピングは秘書のいずみの意見を大いに取り入れた。
餅は餅屋。
女性の事は女性の意見を取り入れるに限る。
最初からプレゼントは、ヘルメットと決めてはいた。
しかし、そのまま同じものをあげるのでは芸がない。
そこでいずみに相談した所、『色はこうした方がいい』やら、舞人との交信は何時でも取れた方がいい等と色々な助言をもらった。
ラッピングに至っては、いずみが行った位だ。
舞人は黙って従うほかなかったりした。

「サリーちゃん、大丈夫かい?」

横座りで舞人に掴って、後部座席に座っていたサリーに声をかける。

「はい。大丈夫です」

走っているから暴風があるが、ヘルメットに内蔵されたイヤホンマイクで、会話は楽々だ。

「ちょっと飛ばすから、しっかり掴っててね」

「はい、わかりました」

そう言って速度を上げる舞人。
それに伴い、しっかり掴るサリー。
お揃いのヘルメットを付けた二人乗りのエレキバイクは、速度を上げながら、旋風寺邸に走っていくのだった。

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