★DB 100のお題 〜前半〜★

□28.傷痕
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バンッバァン!!
響く銃声。

「きゃぁっ!」

いつの間にか収まった胸の中でつい、目を瞑る。
そんな事は殆どなかったのに。




銀行強盗と私の間に居るのは悟飯君だった。

「ご、悟は…グレートサイヤマン!?」

いつの間にか収まっていたのは悟飯君の胸の中。

「大丈夫ですか、ビーデルさん?」

「え、えぇ…」

そう言いながら悟飯君は私をかばう様に背を向ける。
そしてまた響く銃声。

「グレートサイヤマンっ!」

「ひっひぃ〜〜!」

慄く

「コレで最後ですね」

相手が、撃とうとしても弾切れでカチカチという音しかしないのを確認する。

カランカラン。

数発の『銃弾』だったモノが落ちる音を聞く。
今だ!
そう思って悟飯君の背中から飛び出ようとするが、一瞬で血の気が引いた。
悟飯君の服に何か所かの破れがあったからだ。

「大丈夫なの!?ご、グレートサイヤマン!?」

「え?何がですか?」

キョトンとした顔の悟飯君はそう言いながら、今度はナイフで襲ってきた犯人を捌く。

「何って背中に!?」

と言いながら今度はライフルの狙いをそらす為に二人で転がる。
隙を見て…

「たぁっ!」

私がライフルを薙ぎ払い、顎に拳と肘を入れると犯人を組み敷く。

「お見事!ビーデルさん!」

警察の人がそう言いながら手錠を投げてくる。
犯人を確保して、悟飯君の方を見ると居なかった。

「グレートサイヤマン!?」

「ここです」

そう言いながら両の手で一人ずつ、足元に一人と計算人の犯人を確保している。

「手錠をお願いいします」

「う、うん!」

そう言われ、慌てて手錠をかける。
その間に悟飯君は舞空術で宙に舞う。

「じゃあ」

悟飯君はひらり、と学校の方に飛んでいく。
あれ?今日って日曜で学校は休みのはずじゃなっかたかしら?
疑問を持ちつつ、手錠をかけ、警察の人にお礼を言われつつ思った。
学校…行ってみよう。

「ん〜〜、居るかしら…?」

多分、図書館と目星を付けるとやっぱり居た。
私にはよく解らないコーナーの本を選んでる。

「あ、ビーデルさん。お疲れ様です」

「お疲れさまはあなたもでしょ!ちょっとこっち来なさいよ!」

「え?」

明らかに不機嫌を装ってる私に、悟飯君は少し慌てたみたい。

「いいから!!」

そう言って、悟飯君の腕をつかんで進む。
相変わらず、たくましい腕。
さっき包まれた胸も逞しかった。
一体どんな修行をすればこうなるのか、不思議だわ。

「ビーデルさん、一体…」

「いいから!」

バン!
そう言いながら勢いで屋上の戸を開ける。
誰もいないのを確認してから、悟飯君に言った。

「さっき、撃たれたわよね?」

「えっ、あの〜、その……」

嘘が苦手な彼は私と目を合わせないようにあさっての方向を見る。

「悟飯君!」

「直立!」

「はい!!」

「気を付け!!」

「はい!」

体育の時間の号令。
そして、それを利用する。
真面目な悟飯君は逆らえない。
それを利用して、そのまま後ろに回り込む。
その次の瞬間。

カラン、カラァ〜ン

金属がコンクリートに落ちる音。
二人の視線が音の下に行く。
血が僅かについている。
予想するに、悟飯君の筋力で不要物が身体から出たと推測。
銃弾がまるで単なる刺のようだ。

「…………」

「…………」

「これ、拳銃の弾よね?」

「……はい……」

「傷跡は!!」

「大丈夫ですよ」

「大丈夫じゃないわよ!!」

自分で吃驚する位の涙声。
それに驚くのは彼も一緒だった。

「び、ビーデルさん!」

慌てるようなオタオタするような悟飯君。
身長差の分、かがんで覗き込んでくる。

「これくらいなら、僕は大丈夫ですよ?」

困った顔で言う。
大丈夫じゃない、と言えば

「掠り傷にもなりません」

銃で掠り傷になるわけないじゃない、と言えば

「もう痛くないです」

でも、痛かったでしょう?
そう言い合う。
困った彼の顔に一瞬浮かんだ何か。
それに気が付いた表情をした。
何を思ったのか悟飯君が行き成りシャツを脱ぎだす。

「えっ、ちょっ!?」

急な事で慌てる。
そんな事も気にしないで、悟飯君は背を向ける。

「ほら、大丈夫でしょ?」

そう言ってこちらに顔を向ける。
そう言われればそうだ。
血さえ出ていない。

「い、痛くないの?」

「ん〜、痛いって言うよりは痒いな〜」

「消毒だけでも…」

「え?いいですよ、そんな…」

「ホントのホントに痛くないのね?」

「ビーデルさんが撃たれたら、嫌ですからね」

にっこり笑う悟飯君に言い返す。

「私だって悟飯君が撃たれるのは嫌よ!」

「でも、僕にとっては掠り傷でもビーデルさんじゃ違うよ?」

『僕は規格外だから』と笑う。
それに…と小さく零すのが聞き取れた。

「それに…?なに?」

「えっ!いや、あの……」

視線を逸らす為に前を向く悟飯君。
私はそれを捕まえるために素早く前に回り込む。

「なに?」

キッと睨むかのように仁王立ちをして、悟飯君を見上げる。
それに困った顔の悟飯君。

「いや…あの〜……まぁ、何というか、ビーデルさんを守った傷なら…痕が残っても良いかなぁ〜…なんて…」

「えっ?」

予想外の答えに吃驚して声が出ない。
それって何だか分らないけど、ちょっと告白チックに聞こえた。

「ほ、ほらっ!既に疵付いてるし、そのうちの一つが、君の為だったら僕も嬉しいから」

計算なのか、天然なのかわからないけど。
一つだけ言える。

「今更だけど、悟飯君…それって告白かしら?」

「え?これじゃダメだった?」

「ダメって……」

「あ、そうか。言葉が足りなかったですね。」

私の言葉に視線を合わせたまま、納得した顔をする。
そして、にっこりと笑顔。

「僕の最愛のビーデルさんの為なら傷痕が残る方が嬉しいです」

ノックアウト。
何となくわかったわ。
悟飯君は天然で策士なのね…。
こんな事、言われたらK.Oだわ。
絶句している私を嬉しそうに見ている。

「これからは、そう言いますね♪」

何だかうれしそうな悟飯君に絶句しながら、きっと耳まで赤い私。
でも、負けたままじゃいられないと返す。

「もうセルゲームの時の傷痕があるでしょ!」

「アレはアレ、是は是です」

「どう違うのよ」

駄目だ。
コーナーに捕まった。

…あの頃は君を知らなかった…

そう言い含められた。
逃げられない。

抱きすくめられる。
二人の距離が一気に近くなり……
果てしなくゼロに近くなる。

…勿論、君が傷をつけても良いですよ…

なんて言いながら、おでこをコツンッとあてる。
もうどんな回避活動も意味がない。
言い返そうにも、言い逃れが出来ないから。
そして、唇を塞がれるから……



私が悟飯君に『傷跡』を付けられたかは、二人の秘密にしておきたい……





END.

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