★DB 100のお題 〜前半〜★

□07.ツインテール
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あんな発言をしなければ良かったかも知れない
手に心地よい黒髪
同じ黒髪なのに自分とは全く違う
ちょっと癖のあるサラサラの髪
昔の写真を見て失敗したかもと思う
だからと言って今の髪形も好きだ
それに………


07.ツインテール


 「ご馳走さまでした」

ぱんっと音を立てて両の手を合わせ、食事の挨拶をするビーデル。

「お粗末さまだべ」

悟飯の母・チチは嬉しそうに挨拶を返す。
最初は険悪そうだった二人は今は仲良しだ。
女は不思議だと悟飯は思いながら、自身もあいさつを済ませる。

「で、ビーデルさは何してああもバッサリ髪を切ったんだ?」

「え?」

行き成りのチチの質問に吃驚する。
だが、気になれば猪突猛進のチチは更に質問を重ねる。

「髪は女の命だべ。そうもあっさりと切るっちゅう事は何かあったんだべ?」

ギクリ

悟飯とビーデルが同時に反応した。
それを見逃すチチではない。
牛魔王の娘であり、恐らく地球上で唯一、悟飯の父・悟空を無傷で沈められる人物だ。
気こそ読めないが、ちょっとした挙動には反応できる。

「悟飯ちゃん?お前、ビーデルさんに何かしたんか?」

悟飯はギロリっと見られて身が竦む。
軽く頬を掻きながら、目が泳ぐ。

「え〜っとぉ……」

「悟飯ちゃん!!」

「すっすいません!!」

まるで蛇に睨まれた蛙状態の母と息子。

「ご、悟飯君が短い髪の方がいいって言って、す…好きな人の言葉だから、切ったんです…!!」

ビーデルはまさかこんな展開になるとは思わなくて、出てきた言葉に自分でも驚く。
本心が丸出しだからだ。
言って気が付き、頬が紅潮するのが分かった。

「ビーデルさん…」

悟飯はビーデルが普段言わないフレーズに頬が緩む。
『好きな人』とか、『好き』とか[彼氏]などと言う言葉をひどく恥ずかしがり、口に出さないのだ。
唯一の救いは照れたときに言う『バカ』だ。
素直なビーデルは直ぐに顔に出るし、ちょっとしたことで怒るが、謝ればちゃんと許してくれるし、そんなところが悟飯は好きだ。
悟飯もどちらかと言えば(いや、言わなくても)馬鹿正直だったりするが…。
 悟飯の泳がせていた目線がビーデルに行く。
が、照れたビーデルの視線は下を向いている。
そんな二人だがチチが気になったのは『悟飯が』・『短い髪が良い』と言った事実だ。

「悟飯ちゃん、本当にそう言ったんか?」

「え?は、はい……」

「どうゆう積もりで言ったんだべ?まさか、自分好みにじようとしたんか?」

「はぁ?」

チチの意図が分からない。
悟飯は何で、あの時にビーデルを怒らせたのかも解かっていない。
ビーデルに聞いても『うるさい』と怒られるのだ。

「いや、武道会に出るなら短い方がいいと思って…」

ビーデルにも言った言葉だ。
あの時、ビーデルは怒鳴っていた。
今、思い出しても、あんなに激しく怒ったビーデルは怖い。
否、寧ろ今だから怖い。
『別れる』とか言われそうだ。
たまった物じゃない。

「このバカ息子〜!!」

で、母親には怒鳴られる。

「じょ、女性には髪を切ることを勧めちゃだめなんですか?」

「あったりまえだべ!!そうゆうとこは悟空さ、そっくりだべ!」

知らなかった…とはいえ、ビーデルに悪い事をしたな…とビーデルを見やる。
ちらりと視線が合うもチチに視線がいく。

「おばさま、悟飯君も悪気があってじゃないですし」

「悪気がなくても、良いことと悪いことがあるべ!」

「今、伸ばしてますし」

「ってことは切ったの後悔してんだべ?」

「してませんよ。それにくせッ毛だからこの方が楽だし」

「本当の本当け?」

「本当です」

等と女同士の会話。
悟飯がつけ入る隙がない。
でも・けどなんて話しながら、チチとビーデルは食器を片づけ始めた。
二人のやり取りが、食卓から台所に移る。
ぼんやりと二人を見やりながら、悟飯は反省する。
女性に髪を切れと言ってはいけない事を。
ましてや気になる女性に(と言っても悟飯はビーデル以外には全く興味がないけれど)。
色々、浮世離れしているとの自覚もあるが、言っちゃいけない事は数多ある。
けれど、取りあえず問題が無いと悟飯が思って居る事。
それはビーデルに対しての気持だ。
可愛いと愛しいとか、そんな気持ちははっきり伝える。
そんな時にビーデルの頬に朱が差して俯いたりする姿も好きだ。
希に小さく『私も…』と言ってくれたりもする。
なんてことを考えていると、ビーデルが台所から戻ってきた。

「悟飯君、終わったわよ」

「あ、ありがとうございます」

「ねぇ、今日はパオズ山を案内してくれるんでしょ?」

「はい、行きましょう」

「ふふ、楽しみ〜」

 ビーデルはそれまであまり触れなかった大自然に興味津々。
案内をするのも勝手知ったるものである悟飯は安心だ。
何より人が居ない。

「ビーデルさん」

名前を呼んで、導く手を差し出す。

「うん」

差しのべられた手を取るビーデル。
そして軽く握る。

「ねぇ、悟飯君。今何か考えてるでしょ?」

「な、何でですか?」

 暫く歩いた時にビーデルからの質問。
覗き込むようにしてビーデルは聞いてくる。
考えているが、それは別の事じゃなく、ビーデルの事なのに焦った。
繋いでいる手から伝わってしまいそうで、焦る。

「あ!やっぱり〜」

素直な悟飯の反応に、ビーデルは確信を得る。

「ねぇ、わたしには言えない事なの?」

「いえ…、そういう訳じゃないんですが…」

小気味いいくらいの切れ味で悟飯の前に出る。
その動きは予想していたが、攻撃力はこれだった。

「じゃぁ、言いなさいよ」

と言いながら、軽くむくれて見上げてくる。
簡単に言えば身長差ゆえの『上目遣い』攻撃だ。
これはかなりの攻撃力で悟飯は怯む。
ビーデルの子の攻撃を躱せれた事は一度もない。
それどころか、ガッツリとした攻撃力である。

「怒りませんか?」

「聞いてからじゃないと分かんないわ」

素直な回答。
嘘をつきたくないビーデルらしい。

「じゃぁ…」

「言いなさいよ!」

『言えません…』と、続けようとした悟飯の言葉をぶ千切る。

「ねぇ、嘘つかないって…何でも話すって約束したじゃない」

「…わかりました…」

悟飯は決意して、空いてるビーデルの手を取った。

「あの…お母さんが髪の事聞きましたよね」

「?ええ?」

「ほ、本当は切った事、後悔してませんか?」

「え?」

「だって、あんなに綺麗な髪だったのに…」

「え?ちょ、ちょっと待って?」

「はい…」

両手を互いに繋ぎ合いながら話すにしては、悟飯がまとう空気が重い。
対して、ビーデルは訳が分からない、と言った感じだ。

「ご……飯君は長い髪の方が好きなの?」

「え?いや、似合ってれば短くても長くても良いですけど?」

「わた…私に長い髪はにあわない?」

「ビーデルさんなら長くても短くてもいいです」

「あ……アリがトゥ・・・」

切れ味のいい切り返しがビーデルに入った。

「話を戻しますが、ビーデルさんは髪を切ったこと気にしてないんですか?」

「うん。さっきおばさまに言った通りだもん」

「そ、そうですか…」

悟飯とビーデルは互いに照れながら、見つめ合う。
どちらともなく、離された手。
その手で悟飯はビーデルの髪をなでる。

「……ちょっと残念だな…」

愛しそうに自分の髪を梳く恋人に目だけで質問する。

「あんなに綺麗だったし、一回くらい触っておけばよかったな」

ちょっと遠い目をしながら髪に目が行く悟飯。

「おもしろ〜い!悟飯君ったら!」

自分で言ったことを後悔している。
しかも、未練がましげだ。

「だって、今だって綺麗だし…」

「じゃぁ、髪伸ばすわよ?」

「え?」

「髪なんて伸びるんだもん。1〜2年たったら、ツインテール出来るわ」

面白そうにくすくす笑うビーデル。

「1〜2年以上は付き合ってくれるんですか?」

「?」

真面目に切り返してくる悟飯の言葉の真意が解からない。

「僕、個人としては死ぬまで付き合いたいんですけど…」

「もう、悟飯君った…えぇ?!」

明け透けもなく、真面目な顔で言われた。
言葉を返しつつも、言われた言葉を理解して驚くビーデル。

「駄目ですか…?」

「・・・ぃ・・す・・・」

「え?」

真っ赤になって俯き発せられた言葉は聞きにくくて、悟飯は聞き返す。

「ダメ…じゃない…」

「本当に?」

何気に『死ぬまで付き合いたい』発言はプロポーズだと悟飯は解っていない気がしているビーデル。
けれど、本気で答えないとと思うのは当たり前。
こくりと頷くと、悟飯は満面の笑みを浮かべた。

「あ〜、でもビーデルさんならボブとか似合いそう!ポニーテールもいいなぁ〜。あっ!今のショートカットも似合ってますよ」

「ありがと…」

「前髪は…アップもいいし、いっその事切り揃えてもいいな〜」

とか言いながら、ビーデルの髪に触る。
お返しに!っとビーデルが手を伸ばすが身長差ゆえにお返しできない。
それに気づいている悟飯は先制をかけた。

「舞空術なしですよ?」

「ちょと!じゃぁ私やられっぱなしじゃない!」

「残念でした〜」

にこにこと笑いながら満足そうな悟飯。
本当は怒っていないけどそんな振りをするビーデル。

「やっぱり第一印象のツインテールがいいかな〜?」

「ちょっと!あ!」

頭には手が届かないが、悟飯の頬にビーデルの手が触った。
ニヤリ。
そう笑みをこぼすビーデル。

「お返しよ!」

「いひゃ!」

ビーデルの武術家としては細い指が悟飯の頬をつねる。
悟飯は痛がるふりをする。
こんなものは悟飯にとってはなんてことない。
寧ろ、抓って嬉しそうにしているビーデルを見れれば、いくらでも抓ればいい。

「びーでるひゃん!ずりゅいでふゅ〜!」

「ふーんだ!髪だけなんて、決めてないじゃない!」

ぐにゅ〜、と伸ばされる悟飯の頬。
わしゃさ〜っと梳かれるビーデルの髪。
当人たちは至って真剣に『似合う髪型探し』と『その応酬』だが、はた目にはじゃれ合ってる様にしか見えない。

「やっひゃり、ふたつみゅしゅびきゃな〜?」

「もう!いい加減にしなさいよ!」

そんな二人は実は未だ、キスもしていないという話。
二人の仲を知る人はそれに驚愕するしかない。
どのみち、してもしてなくても傍から見れば『オアツい事ですね〜と言うしかないのだから…。


END.




********************
後書。
いや、大概のお題に対しての反応速度が遅いというか、お題のテーマが中ごろに出てくるというか。
すいません!
平にご容赦ください!!

あ〜、今回はちょっとバカップルを目指しましたが、不発弾?
あ、あれ?
まさかの弾切れ?
え?弾入れてない?
と言った感じになりました。

ま、悟飯さんの『ビーデルさんならAll OK!!』感が出てたらいいな?
何で疑問符かって?
そんなの十人十色!!
感想は人それぞれだから!!
批判もカモン!!
まぁ、傷付きはするけどね!!

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