DB 100のお題〈後半〉

□52.妊婦生活
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心配で心配でたまらない
何故かといえば
彼女は余りにも無頓着
もう自分一人だけの体じゃないのに
何でも自分でしようと思うのはいい事だけど
もう少し自覚して欲しい
だって君は……



52.妊婦生活


「よっと!」

そう言いながら高い所に置いた買い置きの珈琲豆を取ろうとするビーデル。

「な!何してるんですか!!ビーデルさん!!」

それを見た悟飯は叫ぶ。

「あ、梧飯くん。ちょうど良かった。」

「何がちょうど良かったですか!!」

「え?珈琲豆取ろうとしたけど、高い所に仕舞って取ろうとしてたから…」

「ビーデルさん!!自覚してくださいよ!!」

「え?なにを?」

きょとんとするビーデルに、悟飯は凄い剣幕だ。
ビルスの件もあり、過保護…いや、超過保護だ。

「今はもうビーデルさん一人の身体じゃないんですよ!」

「え?そんなの解ってるわよ?」

「解かってません!!妊婦は高い所の物とか取ろうとすると負荷がかかるんですよ!!」

既に読破しピヨコ倶楽部に書いてあったことを指摘する。
因みにビーデルにはばれていないが、大学では妊娠に関する医学書も読み漁り、脳内にはインプット済だ。

「これぐらい…」

「駄目です!!」

「むぅ〜、そんなんじゃ家事が出来ないわ!」

「無理なら僕がやります!」

「それじゃ私、奥さんらしいこと出来ないじゃない!」

剥れるビーデルに悟飯はつかつかと歩み寄り、珈琲豆をすっと取る。

「はい。」

「あ、ありがとぅ…」

一応はお礼を言うが、未だ不機嫌なビーデル。
悟飯は真顔で感情が読み取れない。

「お、怒ってるの?」

ちょっと恐恐とビーデールが聞いた。

「怒ってないよ。でも…」

「でも?」

「知らなかったとはいえ一番守りたい人に怪我させちゃったでしょう?」

ちょっと眉根が寄る。
幾ら酒が入っていたとはいえ、一番守りたい愛妻に怪我をさせた事。
自分の傲りで父が死んだこと。
そういう事が一番嫌いなのは誰だって一緒だ。
でも、それをやってしまった。
然も、ビーデルはその時は実は妊娠していた。
もうこれ以上ないほどの最悪さだ。
だからついつい過保護になる。
それはビーデルも解かっているんだけど、流石に過保護すぎて、一寸だけうんざり気味だ。
洗濯も、掃除も、料理も悟飯が過保護を発揮する。

「それは解るけど、あの時は何もなかったし、妊娠は病気じゃないのよ?」

「解かってるけど…心配なんだ……」

まだ膨らんでもいないビーデルのお腹を見ながら呟く。

「どうしたら、悟飯君は心配じゃないの?」

「解からない……」

困ったような、泣き出しそうな顔の悟飯にビーデルはう〜んと唸る。

「ねぇ、洗濯では何が心配なの?」

「高い所だから背伸びするでしょ?それが心配かな」

「じゃぁ、紐を背伸びしなくていい高さにしたら、どうかしら?」

「あ、それ良いですね!」

「じゃぁ早速、明日やってくれる?」

「はい!」

悟飯の顔に少し余裕が出てきた。
そうか。
悟飯の心配のタネを取り除けばいいのだ。
ビーデルは簡単な事に気が付いた。

「じゃぁ、掃除は?」

「雑巾掛けとかお風呂掃除でお腹を圧迫してないか心配です」

「床の雑巾はモップでやればいいかしら?」

「はい!そうですね!」

「お風呂掃除はどうしてもね〜」

顎に手をやりながら模索するビーデル。

「ビーデルさん良ければ、僕がやるよ!」

「その方が…いいわね。じゃぁお願いするわ」

料理はどうしようもない。
幾らハーフとはいえ、大食漢のサイヤ人。
然も悟飯は地球人よりサイヤ人の血を濃く継いでいる。

「食事はどうしようもないし…」

「じゃぁ、せめて週に一回か二回は外食とかしない?」

「ん〜。」

悟飯の稼ぎであればそれくらいは平気だけど、何となく素直にうなずけない。

「あ、じゃぁお義母さんたちと一緒にとかは?」

小さい頃には母を無くしたビーデルは義母のチチを実の母のように慕っている。
それに初めての妊娠だし、色々気になることもある。
折角お隣に住んでいるんだ。
こういう時にはとよってしまおう。
特に過保護すぎる悟飯についても…。

「ビーデルさんがそれでいいなら僕はいいですよ」

「じゃぁ決まり!」

「でも高い所の物をとったり重いものを持つのは禁止!」

「わ、わかったわよ!その代り、よく使うものを低い所に措いてくれれば、だけど…」

「今すぐやります!」

「ありがとう」

「で、決まりましたね」

「何が?」

「妊娠中のビーデルさんの禁止事項」

「心配性の旦那様が言いだしたことだけどね」

ビーデルは半分呆れ気味で言う。
それも愛されているからこそだという事であまり文句も言えない。
そして決まったことは、ビーデルが破ることが無い事も悟飯は知っている。
結局はお互いがお互いを愛するが故に出てきたことだ。

「じゃ、移動させるからビーデルさんは休んでて」

「え?一緒にやるわよ」

「ビーデルさん?」

ビーデルの言葉に満面の笑みの悟飯。
この笑顔が曲者だ。

「わ、わかったわよ!」

そう言いながらリビングに行くビーデルを見送る悟飯。

「本当に昔から無茶するんだから…」

と呟く。

リビングに向かったビーデルはお腹が大きくなったらもっと過保護になりそうだと思う。

「ホント、昔から心配性なんだから!」

と呟く。
この先どうなるのかしら?
そんな疑問を持ちながらソファーに沈み込むビーデル。
お互いがお互いの愛ゆえに呟く不満な言葉。
この先が心配なのはお互い様な、妊婦生活の始まりだった。


END.
*********************

後書。
妊娠したことないし、分らないけど悪阻とか大変そうだな〜。
背伸びとかあんまりしちゃだめだけど、運動不足もいけないらしいし、母親はやはり偉大だと思う。
悟飯は悟天が生まれたときの経験があるから、特にうるさく言いそうだ。

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