★Novels……★

□青き月と紅き月〜神話〜
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 意識の中の悪意も大きくなった。
意識は悪意と善意に分かれた。
善意は人間たちに神と呼ばれた。
神は意識のみの存在で実態を持ち得なかった。
なので大きく光る星を作られ己が身のよりどころとなさった。
「太陽」の誕生だった。

 悪意は人間たちに魔王と呼ばれた。
魔王は実態を持ち、人間と少しも変わらなかった。
しかし彼は凍てつき寒々とした氷の大地を作り己の象徴とした。
その大地は深き深淵の夜にのみ姿をあらわし闇を支配した。
「蒼玉の月」はそうしてできた。

『紅玉の月』以外は全て双子の霊だった。
霊たちは人間たちに天の使い『天使』と呼ばれるようになった。
紅玉の天使は言った。
『我が主、全能の神なる母よ、父よ。何故彼を野放しにしておくのですか?』
その声に金の天使と銀の天使、翠玉の天使は賛同した。
しかし神は其れを良しとはされず言った。
『あれは人間たちの悪意を見た私の中の悪意。光があればできるのは陰であり、彼は光である我らの影。』
金の天使たちは口々に言った。
『では猶の事、拘束するべきではないのですか?』
『すぐに見つけ出し、戒めの中におくべきではないのでしょうか?』
神は言われた。
『私にはもう彼を見つける事はできない。なぜなら彼は人と瓜二つの姿をし、私と同等の力を持っているからだ。』
銀の天使は言った。
『では、あなたの配下の私たちでは敵わないのでしょうか?』
『彼は災いを運んでくるのではないでしょうか?』
神は言われた。
『あなたたちが希望を忘れずに居ればよいのです。彼は悪意だけでなく少なくない善意と、希望を持っていきました。災いとはその善意と希望が人間により消されたときにくるでしょう。』
天使たちは言った。
『では待ちましょう。彼が希望と善意に満たされるまで。』
そうして、神と魔王。
金の天使に銀の天使、翠玉に紅玉の天使たち。
そして世界は誕生した。
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