National Library

□桜
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「もしかして…その為に此処に居てくれたのか?」
もしそれが本当の事だったら、どんなに嬉しいか…
そんな事を考えていたら、胸が締め付けられるような痛みが、走り抜けた。優しさと、もしかしたら…と、思う気持ちで頭の中は、いっぱいいっぱいになっていた。
「今お前に倒れられたら、神子殿が悲しまれる」
そう言って、頼久は立ち上がった。
「お前は何時だってそうだ!何で、俺にかまうんだよ!」
何時の間にか天真は、悔しくて、悲しくて、泣いていた。自分でも気付かないうちに…
頼久は、初めて泣き叫ぶ天真を見て、思わず抱きしめていた。
「俺の事何とも思ってないなら…優しくしないでくれよ…」
声が次第に擦れ、力なく泣いた。泣きまくった。
「天真…お前が、いつか自分の世界に帰り、別れの時が来る…別れるくらいだったら、こんな気持ちは捨ててしまおうと…」
と、頼久は天真をさらに強く抱きしめ、頬にキスをし、唇で涙を拭った。
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