Project(Hiyoshi)

□The Fool
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自分の考えに浸っていた日吉が、ふと周りを見ると、いつの間にか人影がなくなっていた。
場所を把握しようと周囲を見渡すと、どうやらそこは公園のようだった。
町外れの小さな公園は、存在を忘れられたみたいにひっそりとしている。
どうしてこんな所に?
と一瞬思うが、近道か何かなのだろうと、日吉は前を行く柳生の後を疑う事なくついていった。

「日吉くん…」

と、前を歩いていた柳生の歩みが止まり、日吉の名を呼んだ。
自然、日吉も歩を止める。
静かに響く柳生の声が、日吉の頭に何故か警鐘を鳴らした。

「どうか…しましたか?」
「貴方は…仁王くんの事をどう思っているのですか?」
「は…?」

思いがけない質問に、日吉は間の抜けた声を出す。
質問の意味が理解できなかった。
いや、意味自体は分かるのだが。
今、この時にする必要性が、感じられない。
ましてや、こんな俗物的な質問を、紳士と呼ばれるこの人物がしてくる事自体、困惑を生む。
戸惑う日吉を他所に、柳生はゆっくりと日吉を振り返った。
厚い硝子に阻まれる瞳のせいで、表情が見えない。

「答えて…下さらないのですか?」
「柳生さん? どうしたんですか…おかし…わっ!」

静かに話す柳生に、どこか恐怖を感じ、日吉は少しずつ後退する。
すると、後ろにあった植え込みに足を取られ、日吉は尻餅をついてしまった。
衝撃に顔をしかめ、立ち上がろうとしたが、出来なかった。

「柳生…さ…」

いつの間にか目の前に立った柳生が、威圧的に日吉を見下ろしていた。
その圧迫に、立ち上がろうとする事さえできない。
震える瞳で日吉が見上げた瞬間、柳生は日吉に覆い被さり、日吉の体を押し倒した。
突然の事に抵抗も出来ず、日吉の体は重力に忠実に、地面へと倒れこむ。
現状を把握して抵抗を試みるも、時既に遅く、日吉の両手は柳生によって地面へと縫いつけられた。
いくら日吉が古武術をやってるとはいえ、上から男の力に押さえこまれてしまっては、振りほどく事は難しい。
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