Project(Hiyoshi)

□The Fool
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「柳生さん! 一体何を!?」
「日吉くん…貴方は罪な方だ…」
「何を…」
「私は貴方の事が好きなのです…。なのに、貴方は仁王くんのものになってしまった…」

日吉の目が見開く。
思いがけない言葉だった。
目の前のこの男性が、よもや自分にその様な想いを抱いていたなど、気付きもしなかった。
しかし日吉にとって、彼は自分の恋人のパートナーにすぎない。
特別な想いなど、抱いた事などないのだ…。
想いを寄せられるのは嬉しい。
しかし、強すぎる柳生の瞳と、今の状態は日吉に恐怖しか与えない。

「…すいません…でも俺は…」
「知っています。貴方の気持ちは…。だから私は、苦しいのです」
「柳生さん…」
「だけどだからこそ…。貴方を手に入れたい…」
「柳生さん!?」

言葉と共に、柳生の顔が近付いて来て、日吉は驚愕した。
少しずつ、だけど確実に、柳生の顔が降りてくる。
何とか逃れようと、身を捩るものの、押さえつけられた体はびくともしない。

「柳生さん、やめっ!!」
「好きです…日吉くん」

日吉の静止に聞く耳をもたず、柳生は日吉の両手を一つにまとめ、片手で押さえつける。
そして、空いた片手で、顔をそむける日吉の顎を強引に自分のほうへと向けた。
唇が…降りてくる。

(怖い!! 助けて…)

「いっ…やぁぁっ! やだっ、助けて…仁王さん!!」

ぼろぼろと日吉の瞳から涙が溢れた。
声の限りに助けを呼ぶ。
愛しい恋人の名を…。

すると、ぴたりと不自然に柳生の動きが止まった。
いつまでも降ってこない口付けに、日吉はぎゅっと閉じた瞳をそっと開いた。
柳生は、まっすぐに日吉を見ていた。
酸素を求めて日吉の咽喉がなった。
それをきっかけに、また柳生の顔が降りてくる。
しかし唇にではなく…。
唇が触れたのは、日吉の頬。
そのまま流れる日吉の涙を、柳生の唇が吸う。

「??」
「すまん…」
「え?」

思いがけない謝罪に、日吉は首を傾げた。

「ちと、遊びがすぎたようじゃ…」

聞こえてきた声は…。
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