Project(Hiyoshi)

□Lucky Trap
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本当に珍しい。
彼が忘れ物をするのもだけど、慌てるなんて…。
何か急ぐ用事でもあったのだろうか。

そこまで考えに至って、はたっと気付く。
もしかして…。
考えすぎだろうか。
もしかして、俺が待ってると思ったから。
だから、慌てて帰る準備をした。
なんて…。
自惚れすぎだろうか。

「おい」

考えに、一人幸せに浸っていると、日吉くんが去っていった方から、威圧的な声が聞こえてきた。
振り向かなくても誰だか分かるのは、ある意味凄い。

「人んトコで気持ち悪ぃ顔して突っ立ってんじゃねぇよ」
「気持ち悪いとは酷いなぁ、跡部くん」

振り向いた先にいたのは、やはり跡部くんだった。
相変わらず俺様な態度で、後ろにはでっかい子(樺地くんだっけ?)を控えさせてる。

「あん? 本当の事を言ったまでだろ、なぁ、樺地」
「ウス…」

いや、そこは否定する所だから。

「それより、てめぇ、氷帝に何の用だよ」
「心配しなくても跡部くんに用事じゃありませんー」
「…日吉か」

俺の言葉に、一転跡部くんの声と表情が険しくなった。
まるで値踏みでもするように、俺の顔をじっと見ている。
何となく目を逸らしちゃいけない気がして、俺もじっと跡部くんを見つめ返した。

「…てめぇ、本気なんだろうな」
「え?」
「アイツは、俺の大事な後継ぎだ。これから氷帝テニス部200人の頂点に立つ奴だ。遊び半分でちょっかい出してんなら、容赦しねぇぜ?」

言って、跡部くんはますます射すような目を俺に向けた。
心なしか、後ろの樺地くんの表情も強張った様な気がする。

日吉くんがどんなに氷帝メンバーに可愛がられているか、分かった気がする。
普通、あんな態度の子は敬遠されこそすれ、皆に庇われるなんて事はない。
だけど不思議な事に、日吉くんはどこか守ってあげなきゃって思わせる所がある。
この跡部くんですら、日吉くんの事を守ろうとしている。
だからこそ。
俺が、日吉くんにちょっかい出してるのが、気に食わないのだろう。
世間的に遊び人に思われてる俺だから。
日吉くんに対しても、遊び半分で近付いている様に見えてもしかたないのかもしれない。
でも…。
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