Project(Hiyoshi)

□Lucky Trap
4ページ/5ページ

「御免、跡部くん」
「あぁ? てめぇ、まさか…」
「俺、本気だから。跡部くんや皆に何言われようと、諦める気はないよ」

俺の言葉に、跡部くんの目が見開いた。
まさか俺が本気で日吉くんの事を想ってるとは、考えてもみなかったのだろう。
俺の真意を測るように、跡部くんはじっと俺を見つめる。
俺の気持ちにやましい所なんてないから、俺も黙ってそれを受け止めた。

やがて、跡部くんなりに何かを納得したのか、ふと視線を逸らした。
そのままチッと小さく舌打ちすると、くるりと樺地くんへと振り返る。

「跡部くん?」
「…一つだけ言っておく」
「うん」
「…アイツを泣かしたり、辛い目にあわせたりしたら…承知しねぇ」
「分かってる」
「…行くぞ、樺地」

跡部くんと樺地くんは、そのまま去っていった。
許してもらえたとは思わないけど、どうやら俺の本気は分かってもらえたらしい。
例え、跡部くんや周りの皆が反対しても、俺の想いは変わらないって。

しばらく跡部くん達の去っていった方をぼんやりと見つめていた俺の耳に、小さく砂利を踏む音が聞こえた。

「日吉くん」
「あ…」

そこにはやはりどこかぼんやりとしている日吉くんの姿があった。
走ってきたのか、心なし頬が赤い。

「プリントはあったかい?」
「あ、はい。すいません。お待たせしてしまって…」
「いーえいえ。それじゃ、今度こそ帰りましょっか!」
「はい…」

どことなく態度の可笑しい日吉くんを不思議に思いながらも、俺達は再び歩き出した。
さっきと同じように、俺が前で、日吉くんが後ろ。
数歩下がって歩く日吉くんから離れないように、少しずつ歩幅を合わせる。
こんな些細な事が幸せなんだと、言ったら跡部くんは信じてくれるだろうか。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ