Project(Hiyoshi)

□Lucky Trap
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「あ…の…」

しばらく歩いていると、後ろの方から控えめに俺を呼ぶ日吉くんの声がした。
彼が話し掛けてくるのは珍しい。
いっつも俺が一方的に喋ってるだけなのに。

「はい?」
「一つ聞いてもいいですか?」
「俺に答えられる事だったら、何でもどうぞ?」
「千石さんは…どうして毎日俺を…迎えに来るんですか?」

日吉君の言葉に、俺はぴたりと足を止めた。
驚いて振り向くと、さっきより更に赤くなって俯く日吉くんの姿。

まさか、今更疑問をもたれるとは思ってなかった。
まさか、今更興味をもたれるとは思ってなかった。

これはもしかして…。
先ほどの跡部くんとの会話を聞かれたのかもしれない。
だとしても、これは確かに日吉くんが俺の事を意識しだしたって何よりの証。

罠に…かかった…。

「知りたい…ですか?」
「…えっと…はい」
「…じゃあ、12月5日、俺と一緒に出かけましょう」
「は? どうしてそうなるんですか?」
「じゃないと、教えません」
「…分かりました」

どこか納得がいかないって感じで。
だけど、日吉くんは確かに頷いた。
この様子だと、きっと忘れているんだろう。
それか元々意識していないのか。

12月5日は日吉くんの誕生日。

そんな大事な日に、俺と会う約束をしてくれた。
それが嬉しくて、つい答えを言ってしまいそうになるけど。
それじゃ罠を仕掛けた意味がないから。
もうすこしだけ、気にしてて。

罠をしかけたんだ。
日吉くんが俺を気にするように。
俺の事をふとした瞬間、考えてくれるように。

毎日会いに来て。
毎日話しに来て。
俺の姿が目に残る様に。
俺の声が耳に残る様に。

少しずつ、確実に。

卑怯だって分かってるけど、こうするしか方法を思いつかなかったから。
それくらい本気だって、分かってもらえるように。
答えをプレゼントにのせて、きっと渡すから。

「それじゃ、帰りましょっか?」
「はい…」

それまで、この罠に気付かないで…。
君を幸せにする為にはった、幸運の罠に…。






マイナーでカウントダウン第二弾。
12月2日はキヨヒヨでお祝いしました!
日吉に呆れられないように、どこか可笑しい敬語を使うキヨに萌えます。
普通に喋らせて、日吉に呆れられるキヨにも萌えます。
跡部を始めとした氷帝R陣は、日吉の自称保護者です。


2004.12.02 Tasuku Midou
2005.10.28 転載
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