QuinRose
□深紅
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燃えるような緋色の空が頭上に広がる。
ハートの城の赤いバラもなお赤く、鮮やかな血の色に染まった。
「久し振りの夕方だなぁ」
ついさっきまでは闇の中で星が揺れていたし、その前はずいぶん長い昼だった。
どのくらい時間帯が変わったか、実は覚えていない。
でも夕方は久し振りだと断言できる。
「そうね」
ほら、隣にいるアリスも頷いてる。
「あなたと会うのも久し振りじゃない?」
アリスと会ったのは前回の夕方だった。それ以降、夕方にならなかったから覚えていたんだ。
空が赤くなれば、きっと彼女を思い出しただろう。
最近はずっとそうなんだよ。アリスに会える時間が待ち遠しい。
これって、よくない傾向だな。
そう何度も思うんだけど、アリスと距離を置くなんて、もうできない。
「久し振り、か」
視線を外して呟くと、予想通りに聞き返される。
「寂しいなーって思ってさ」
「はあ?」
「だって、その間に君は誰と過ごしてたんだ?」
「……誰って」
「そいつも」
アリスの言葉を遮って、少し大きな声を出す。続く言葉は彼女だけに聞こえればいい。
「この時間帯のバラみたいに、赤く染まればいいのにな」
覗き込んだ瞳の中で、俺はわらっていた。