QuinRose
□思うより、ことは単純
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私は読書が好きだ。
本を読むことが好きだ。
えぇ、それはもう好きなのである。
「だから! 邪魔しないでっ」
「つれないことを言うな」
最近、部屋を訪れると必ずブラッドに絡まれる。
本を選ぶ私を後ろから抱きしめてみたり、ページを捲った指先にキスしてみたり。
読書に集中なんてできやしない。
「触らないでよ!」
「君と私の仲だろう?」
今更だろうと何だろうと嫌なものは嫌だと言いたい。
「私は本を読みたいの」
「私は君に触りたいんだ」
露骨な物言いに眉を顰める。
「不満そうだな?」
「触りたいって……」
「その通りの意味だが」
他に意味があるのか?
首を傾げて不思議そうにしてるけど、これはポーズだろう。どう見ても。
誤魔化されないわよ、と睨むとブラッドは肩を竦めた。
「ふむ。言い方がお気に召さなかったか?」
「それもあるけど……」
表現が変わったところで同じ意味なら何も変わらない。
私は本を読みたい。
「気に入らないんだ」
唐突にブラッドが真剣な声を出した。
気に入らないのは私の方だというのに、何だというのか。