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□第三話「ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス」
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「すンませんでしたッ!」
探偵社御用達の喫茶店、うずまきに谷崎君の謝罪の言葉が響いた。
「へ?」
「その試験とはいえ随分と失礼な事を…」
和解(の様な何か)の邪魔はしたくないので出来るだけ静かにティーカップを置いた。
「…太宰さん。」
「ん?何だい美紅ちゃん」
「…何だい、じゃないですよね。
今すぐ腰から手を退けてください。セクハラで国木田さんに訴えますますよ」
「えー私と美紅ちゃんの仲じゃないか」
「そんな体をベタベタ触り合うような関係を
誰とも持った覚えはありませんよ・・・・人違いでは?」
私と太宰さんはお互いの身体中をベタベタ触るような関係ではない。
「誰ともねえ…」
「ええ、断じて無いです。」
へぇ、と乱歩さんの様に目を細めてこちらを見てくる。
嘘などついてない。
太宰さんの前で嘘をついてもすぐにバレてしまう。
いや、もしかしたら元よりそういう性格だったのかもしれない。
「う〜ん、じゃああの美人の給仕さんに『死にたいから頸絞めて』
って頼んだら応えてくれるかなあ」
「黙れ迷惑噴霧器!大体お前はいつも___」
また始まってしまった。
まあ…標的が移ったから良し。
流石に五月蝿いので中島君の方に戻ることにした。
「ええと、改めて自己紹介するとボクは谷崎。
探偵社で手代みたいな事をやってます。そんでこっちが…いてッ」
「妹のナオミですわ。
兄様の事なら何でも知ってますの」
ナオミちゃんがネットリとした流し目を送った。
・・・・この2人が本当の兄妹かは謎だ。
2人しかわからない。(乱歩さんはどうかわからないが。)
探偵社七不思議にもなっている。
「き、兄妹ですか?本当に?」
「あら、お疑い?…勿論______」
中島君がナオミちゃんのスイッチを入れてしまったようだ。
「いや、でも…」
まだまだ疑心暗鬼な中島君。
髪の色も目の色も同じではないのだから仕方ない。
「中島君気にしては負け、というやつですよ。」
「あ、はい。」