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□第四話「棘まで美し」
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今回は太宰さん目線です。


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美紅が倒れてから1日。


熱は下がり、落ち着いてきているが
未だ1回も起きていない。





へへ、と少し笑顔になったり、

涙を零したり、


時々今の彼女が覚えてない筈の
名前が出てきたりしていた。



彼女の身に今何が起こっているかは、
安易に予想できた。





起きた頃には、もう。







「…ぅ…あ…」










彼女の体が少し震えている。
顔が青白くなっていた。





「美紅…」


「ん…」




幼子をあやす様に頭を撫でた。
サラサラとした髪が心地好い。


眉を寄せていた顔が元の可愛らしい顔に戻っていく。






彼女は昔から変わらなかった。
記憶をなくしても。



誰にでも優しくて、
責任感が強くて、
自己犠牲の多い子。



そんな彼女だからこそ、
何度も何度も自分を責めていた。
「何故、思い出せないのか」、
「誰1人思い出せない、薄情者め」と
私の居ない所で1人泣いている事もあった。


記憶を思い出そうとした時。
体調不良で数日間寝込むことも多かった。




その際体調が戻るまで私がついて看病した。



その後、記憶に関する話題を一切しなくなった。
迷惑をかけている、とでも思っているのだろう。



しっかりしてると思えば自分に対して、無頓着。




皆いつもそんな彼女の事を
気にかけてたんだと思う。




勿論、私もだが。





「…ん…」







彼女が目を醒ませば今後、
正直どうなるか分からない。



探偵社に残るのか、元の場所に戻るのか。




今更あんな危険な所に美紅の身は
預けられない。






…本人の希望であれ、

私の傍を離れて欲しくなかった。
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