創作小説〜短編・中編〜

□私だけを
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貴女は美しいが冷淡です
勘違いしないで下さいね
批判している訳じゃありません

貴女は冷淡な貴女も含めて貴女です
貴女を成しているものをこの私が否定する訳ないじゃないですか

…私の想いをいとも簡単に踏みにじっても何も想わない貴女の冷淡さを ね

え?矢張り批判しているように聞こえる?
…まあ批判という程ではありませんが少し憎からず思っていますかね
ほらよく言うじゃないですか「可愛さ余って憎さ百倍」って
好意と憎しみは表裏一体なんですよ
当然 例に漏れず私もそうです

貴女の眼が私は大好きです
まるで透き通っているかのような錯覚を覚える 澄み切ったその眼 
とても美しいです
嗚呼でも私は貴女の疲れが滲み出ている眼が一番好きです 少し可笑しいかもしれませんが
退廃的で儚くて 貴女を一番表している
大好きです 

私は貴女のそんな眼に写っているその時 
初めて自分という存在を認識するんですよ
貴女の眼の中でしか私は生きていけないんです
貴女が私を見たときの私の高揚感と言ったら…!
狂喜乱舞と表しても何の遜色はありません

…だけど貴女は私が喜びに打ちひしがれているその瞬間にはもう私を見ていない 
それに気付いた時 私はどれほど絶望し 嗚呼いっそのこと消えてしまいたい 死んでしまいたい この世から朽ちて無くなりたい と願うことか…!
貴女は私をその眼に写しておきながら私を見ていないんですよ
意味がわかりませんか 
貴女はいつもいつも私の中身を見ない外面を見るんです
そしてそれを貴女のその眼へと写すんです
貴女の目に写る私はいつも虚偽の私なんですよ
私を本当に意味で見てもいないし写してもいないんです
…どれほどそれが悲しいことか酷いことか嗚呼あの時の嘆きを思い出すだけで涙が溢れてきます

…少し怨み節になってしまいましたね
貴女を怨んでるわけじゃないんです
本当です
これは私に原因があるんです
それを私は分かっていますし知っています
貴女に非なんてものは存在していないんです

私は 
嗚呼醜く愚かな私は
貴女に見られたいと望むだけで実際にそれを行動に移していなかったんです
本当に情けないですよね
でもそんな私を貴女は拒否しなかった
貴女はチャンスをくださったんですよね
私が貴女に受け入れて貰えるチャンスを
嗚呼貴女は冷淡だが何よりも優しい 愛しています
私は貴女の与えてくださった機会を無碍にすることなど出来ません
だから私は…

…泣いてるんですか?
どうしてですかお願いです泣き止んでください
貴女の泣き顔は大好きです特に私が原因の泣き顔は
それでもやっぱり好きな人には笑って欲しいじゃないですか
笑ってください ほら

だからあんなことをしたのか ですか
はい貴女が私を見るのなら私はなんでも…

返して ですか 

…一つ疑問なのですが 
貴女はどうして消えてしまったモノなんて考えているんですか 
消えてしまったんですよ
もうこの世には存在しない
考えたところで何も起こらないじゃないですか
そんな無意味な行動をどうして貴女は

無意味なんかじゃない って…

…じょ冗談ですよね
あぁ愚問でしたね 私が貴女のことで分からないことなんてありません

…信じられない

ねえどうしたら僕の方を見る
どうしたら僕で埋め尽くせる?
もっともっともっともっと消さなくちゃ駄目だった?それでこそ僕と貴女以外の全てのモノを消さなくちゃならなくちゃ駄目だった?
ねえ答え…

…もっ申し訳ありません
私としたことが激情のあまりつい口調が…
お願いします見捨てないでください嫌わないでください 
貴女を愛しているんです何よりも何よりも 

無礼だと罵ってくれても構いませんがどうかどうか嫌わないで下さい 貴女に嫌われたら私は…

…! もうとっくに私のことなんて嫌いと仰られましたかどうしてですか
ああこの程度の努力など当たり前だともっともっと頑張れとそういう意味ですか
貴女は怠慢が嫌いですもんね 分かりましたそうですよねもっともっと頑張らないと貴女は私を見てなどくれませんよね

…ねえどうしてあんなモノの名前を呼んで泣くんですか
返して 返して って戻らないですよ現実を見ましょうよ 
…もしかして私を嫌いになられたのはアイツを消したからですか
…考えたくもありませんでしたがそれしかありえませんよね
………はぁ

私は先ほど「可愛さ余って憎さ百倍」と申しましたよね
今私 貴女のことが憎くて憎くて仕方ありません
私の頑張りを認めてくれなんて差し出がましいことは言いませんが
そんな頭ごなしに否定されたら流石に私も悲しいですよ

ねえ私悲しいですとてもとても
ええそれこそ私が貴女の目に映らないと嘆いていたことよりももっともっと深く私は深く悲しんでいます
貴女と共に消えてしまえたらどれ程幸せか
…そんな目に分かるように怯えなくても良いじゃないですか 興奮してしまいます

大丈夫ですよ安心して下さい
私は貴女と共に生きたいです
死にたくなんてありません
ねえこちらを向いてくれませんか
…嗚呼やはりそうだ
今 貴女は私を写しています
本当の私が写っています

痛い離してと申されましても貴女が素直に私の方を見ないからですよ
自業自得です

私貴女にもっともっと見つめてもらいたいです 
だけどこのままでは叶わないのは私も分かっています

だから私 貴女を縛り付けて閉じ込めようと思うんです
永遠に

心優しい貴女はきっとそうされていても他の輩のことも考えるでしょうが安心して下さい
全員消しますから 
流石に生の死体は刺激が強すぎますから葬式中の写真でも撮りましょうかええそうしましょう

嗚呼呂律が上手く回っていませんよ 可愛いですね
勿論貴女の言うことは分かっていますけど
何でもするからそれだけは止めてとはとても甘美な響きですね

…貴女がもしこの願いを叶えて下さるのならば私は貴女の言う通りにしますよ
嘘なんて吐きません そこまで堕ちていないですよ私は

ではお願いしますよ

今一度初めて出会った頃のように無邪気に笑ってくださいませんか


…ほら無理でしょう 恐怖が顔どころが全身に現れていますよ
…良いんですええ叶うはずのない願いとは分かっていますから

怖いですよね私のことが怖いんですよね
貴女は先程から怯えた眼で私を見ている
分かっています
愛おしい愛おしい貴女の挙動なんて手に取るようにわかります
良いんです 私のことを見てくれないよりかは見てくれる方がよっぽど良い
例えそれが愛のないものでも よっぽど

ねえ私何処から間違えたんでしょうか
本当に分からないんです あれが消えて悲しんでいる貴女が 糾弾し私を非難している貴女が

ハハッ…不思議ですよね 私貴女の太陽のような明るい笑みに惹かれて貴女を想い始めたのに
今では 貴女が悲痛の表情を浮かべていても傍に居てくれるなら貴女の目に私が写るのならそれも良いと思っているんですよ
私いつから狂ってしまったんでしょうかね

私はただ貴女に見て欲しかっただけなんですよ…愛されたかっただけなんです
信じて下さい 信じてください

愛しているんです 貴女を何よりも

ただそれだけなんです…

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