創作小説〜短編・中編〜

□構築
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初めに気付いたのは、二学期明けの最初の授業
先生の匂いが私と全く同じ匂いだったこと

同じ柔軟剤を使っているのかな、こんな偶然もあるんだなぁ

そうは思うものの少し気味悪い、のは果たして気のせいなのだろうか

胸に少しの疑問を持った
直感と言うよりかは虫の予感と言ったほうが正しい、何か悪い気がするのだ、だからと言ってどうしようもないのだが

私は何も言わず何も触れずその授業が終わるのを待つ

ようやく長い授業が終わったと思ったら、先生が何か言いたげにこちらを見てきたのだが、気付かないふりをして友達にへと話しかけた

「先生 名無しさんに用でもあったんじゃない 見ていたっぽいよ」
「気のせいだよ」
「気のせいじゃないよ!」

「ねえ先生ー!」

教室から出て行く先生を引き止める友人 こんなことなら話しかけなければ良かったと後悔してももう遅い

先生が訝しげにこちらを見る

「どうかしましたか?」
「先生名無しさんに用でもあるんですかー?こんなつれない子に頼らないで私に頼んでくださいよー」

お調子者の彼女に気分を良くするもなく害するもなく、先生は淡々とした様子だった

「…特に何もないのですが」
「頼ってと言われれば頼りましょうかね このプリントを宮本先生にまで持って行って下さいますか?」

話しかけなければよかった、下手した
と言った顔でこちらを見る友人
「まあ頑張って」
「薄情者!」
「さあダッシュで持って行ってください 頼っていいんですよね」
先生は数十枚のプリントを彼女にへと託す
「はあい」
そう返事をして文字通り宮本先生の下にへと走っていく彼女の背中を見届け、さあもう先生の近くにいる意味などない、自分の席に戻ろうと思って 脚を踏み出すよりも先に先生の声が私を引き止めた

「あっそうだ名無しさんさん、大した用ではないんですけどね」
そちらに引き寄せることもなく 不意に先生が近づき耳打ちをする

「いっしょの匂いですね」

まとわりつく声 厭らしく聞こえたのは何なのだろうか
謎の気持ちを言葉にも出来ず固まっている隙に、それじゃあ と言って先生は去って行ってしまった

私に向けた去り際の笑みが 頭にこびりつく

「…ぁ」

ぞわぞわする

そんな私の気持ちとは裏腹に 友人は 疲れたーと笑顔で帰ってきたのだが、私は彼女にこの謎の感覚を言うでもなくそっと胸の奥に隠した

気のせいであってほしい そんな思いと一緒に
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