創作小説〜短編・中編〜

□永遠
1ページ/1ページ


「俺はね、思うんだよ」

そう妹に話しかけるも当たり前の如く返事は無い、そもそもそれを望んでいるわけでもないので構いやしないのだが

頬へと手を添える まだ起きない

触れている部分に熱が帯びるのは、自然の出来事だからなのかそれとも俺のせいなのか

「大抵はさ」

一方的な話を続けた

「こういう立場の者は
どうして兄なんだ、
どうしておまえは妹なんだ 
と言うじゃないか、成る程気持ちはわかる、
だけど彼らは少し驕り過ぎじゃないかと思うんだ」

「だってそうだろ?今世で愛しい人と出会えたことにお礼も言わず不満をタラタラと…」

ああ寝息すらも愛おしい、おまえの全てが愛おしいんだ

「俺はとても有り難く思っているよ こうしてお前と一緒にいれることを」

手を頬から唇へと

「だけどやっぱそれだけじゃいられないよな」

「なあ…おまえは一体何処の誰と結婚するんだろうなぁ」

唇から首へと

「いやそれだけじゃない、果たして来世でもこんなに愛しいおまえと出会えるのかな…?今世限りの付き合いなのだろうかな…?」

「最近そんなことばっかり考えているよ、眠れないんだ」

こんな叫びも意に介さずすうすうと寝息を妹はたてる

「ああ本当におまえは可愛いな」

「おまえの笑顔を見れるなら俺は…お兄ちゃんは何だって我慢するよって言いたいところだけど いざ考えたら…」

「あぁ醜いなぁ…」

「…ん」

妹が声を出す

「ごめんな 起こしちゃったか」

頭を撫でる 

別に起こしたことを詫びる気持ちは無かった、そもそも後々起こすことになるんだから
それでも謝罪の言葉を縦に頭を撫でたのは
お兄ちゃんとしてただ髪に触れたかっただけ

「…なあ知っているか」

そんなお兄ちゃんに嫌気が差したわけでもない、だけど俺は救われたかった

「自殺したらさ、ずっとずっと同じ人生を繰り返すらしいよ」

そんなものに確証なんてない、何処から聞いたのかも知らない

だけど縋らずにはいられなかった

この人と来世もそのまた来世も永遠にずっと一緒にいれるなら

「俺はお前に嫌われても良いよ」

非道いエゴだよな

そんな言葉を飲み込み、妹に接吻をする

「…?」

寝ぼけた妹にもう一回それをすると みるみる内に、その瞼が開かれる

「お、お兄」

口を手で防ぐ

「俺のことを兄だと思うのは止めてくれ…俺もおまえのこと 妹と思うの止めるからさ」

「どういうこと…お兄ちゃん…」

掠れた声が漏れる

「お兄ちゃんじゃないだろ?」

「なあ…名無しさん…俺の名前を読んでくれよ」


名無しさんが俺の名前を呼んで

名無しさんを唇を重ね合わせて

名無しさんと一つになって

名無しさんは最期に俺だけを見て

俺は最期に名無しさんだけを見て


それが繰り返し繰り返し続くだなんて…いやもしかしたら前世の俺達もこうしていたのかもしれない

「…ごめんな」

ああなんて最高なのだろうか

にやついた顔を隠すこともなく俺は妹に覆い被さった

「愛しているよ…名無しさん」

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ