創作小説〜短編・中編〜

□構築
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次に気付いたのは 三学期明けの初めの授業
先生の私物全てが見覚えのあるものだったこと

少し考えて分かったのは

先生が持っている筆箱もペンもブックカバーもファイルも何もかも私の持っているものと同じ ということ

これは果たして偶然と思ってしまって良いのだろうか? と疑ってみたが、
例えばあのブックカバー あれを学校に持ってきたことはないので先生が知っていることは無い

だから意図して合わせているなんてことはありえないし出来ないはずなのだけど

「先生ー!なんで授業に小説なんて持ってきてるんですかー!」
「…気まぐれですよ」

その瞬間 とてつもない寒気がした
本当に気まぐれなの?
そんな言葉が喉から出かけるも、授業中なのでそんなこと言えるわけもない

ああ早く授業が終わればいいのに

それだけをひたすらに願い続けた
友人と喋って 何もかも一旦忘れたい

永遠かと思われる時が過ぎて チャイムが鳴る
その音は救いだった

「やっと終わった」

礼をした後に本心が口から漏れ出す
抑えきれない嬉しさと達成感だったのでそれも仕方のないことだと思うけれども

「そんなに僕の授業は嫌ですか?」

そのせいで先生に話しかけられることになるのなら、席替えで前の席となってしまった自分の運命を呪いつつ、先ほどの自分をぶん殴ってやりたく、仕方のないことで済ませれることではなかった

「…いやって訳じゃないんですけど」

何か嫌な感じがするんです
なんて素直に言えず 言葉を濁す

「いっしょ ですよね」

先生はさも当たり前かのように微笑んだ
「…え」
「僕の持っている何もかもが名無しさんさんといっしょなんですよ」

ほらね とブックカバーを外したその中には 私が先日購入した小説があった

「…」

悲鳴すら出ない ひたすらに怖かった

誰か助けて と周りの人を見るけれど皆 各々の話に夢中でこちらを見ていない

「それじゃあ また明日の授業で」

笑みを一切崩さず 先生は私にそう言って 教室から出て行った

「…ぁ」

息を吐く

やっぱり気のせいなんかじゃ無かったの
先生は望んでかはわからないけれど少なくとも知っていて私と同じ種類のものを使っていた
何でかは分からないけど

ざわざわとする 虫の予感というやつだろうか

嫌な予感が止まらない
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