確かにそれは恋だった

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桜が舞い、薄桜学園の入学式が始まった。

「如月咲良」

自分の名前が呼ばれ、立ち上がる。

着慣れない制服をなんとか着こなし、自分の名前を呼んだ人物を見る。

くたびれた黒のスーツ姿。年齢は二十後半か三十くらいだろうか。

この男が今日から一年自分がいるクラスを担当する教師だ。

(名前はなんて言ったか)

教室にいたときに自己紹介をされた気はするのだが、昨夜の睡眠時間が短かったせいで記憶がない。

(まぁ、これから覚えていくだろうし)

クラス全員の名前の復唱が終わり、全員が座る。

これから始まる高校生活に、ただひたすら窮屈さを感じるしかなかった。

  〜

「咲良さん、入学おめでとうございます」

咲良は放課後すぐに生徒会室に向かった。

「……ありがとうございます」

部屋の奥のソファに腰掛ける男と傍にいた二人の男。

全員、学生には見えないがあまり深く追求しないほうがいいのだろう。

「貴方はいつまでその派手な学ランを着ているつもりなんですか」

咲良は真っ白な色の学ランを着た男に話しかける。

「そう苛立つな。時間は余るほどある」

「その時間の使い方を明らかに貴方は間違っていたとしか思えませんが」

何を言ってもこの男は軽く受け流すことは知っているが、それでも何か一言言わずには気が済まない。

「とにかく。貴方は早く嫁見つけて卒業してください。風間」

風間と呼ばれた男はニヤリと笑い、こういった。

「目星はもうついてある。確か今年はおまえの他にもう一人、女子が入ったと聞いた」

「だったら最初から男子校じゃなくて共学行けって話だよな」

「もう本当にそれなんですけど……不知火さんと天霧さんにも迷惑かかってるんですよ」

しかし風間は聞く耳持たずで、もう一人の女子生徒について語っていた。

「咲良さん、今日は疲れたでしょう。もう帰ってゆっくりしてください」

天霧の親切な提案に咲良は乗ることにした。

これから三年間、どうやって過ごしていこう。


放課後の学校は先輩達が部活の勧誘でとても賑やかだ。

(部活か)

何も考えていなかった。生徒会に入ることは必然だったが。

(生徒会と部活の両立って出来るの?)

何せ会長がアレだ。自分が多忙になる未来なんて目に浮かぶ。

部活に入ってみたい気持ちはある。中学の頃は帰宅部で、部活に入るなんて考えもしていなかった。

「き、如月さん……」

後ろから声が聞こえた。女性的な声。

元男子校で、今年入った女子は自分を含めて二人。

そのもう一人は。

「えっと……雪村さん?」
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