確かにそれは恋だった

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投げた球は綺麗な曲線を描き、バスケットゴールに吸い込まれていく。

「お、おお」

投げた本人はここまで上手くいくとは思ってもいなかった。

「すごい! シュート出来たね」

「人並みに、だけど」

それでもボールを上手くバウンド出来なかった頃に比べたら上出来だ。

だけどもっと練習したらもっと上手くなるはず。


(クラスの皆に迷惑をかけるわけにはいかない)

「咲良ちゃん、今日はもうほどほどにしよう」

「でも、やっと平均レベル並になったんだしもう少し練習した方が」

「やりすぎると逆に何も出来なくなるよ。最初の頃と比べて上手くなったんだし、今日はやめとこう?」

千鶴にこう言われては従うしかない。咲良はチーム戦の方に参加することにした。

(あの馬鹿にしてきた人達に、また馬鹿にされたくないのに)

特段頑張るつもりはない。だが今のままだとバスケが出来ないと馬鹿にしてきたクラスメイトを見返すことも出来ない。

(我ながら矛盾してるよな)


「……おい、如月」

「ハッ」

六限目の授業が終わってから意識がフリーズしていた。

すぐに起き上がると目の前には土方がいた。

待って、今何時だと時計を見ると時刻は四時半だった。

土方はすぐに起こしてくれなかった。しばらく時間をおいて様子を見に来てくれたのか。

「一時間経ってまだ寝ていたら起こそうと思ってな」

「そうですか」

知らず知らずのうちに椅子を少しずつ後ろに下げる。あまり近い距離に男性がいるのは苦手だ。

その様子を見た土方は苦笑いをする。

「原田に体育で気張りすぎていると聞いてはいた。体力的な差は男女で別れるのは仕方がない。あまり無茶をするなよ」

体育の状況は全部土方に筒抜けだった。

女子が二人しかいない分、教師も気を遣っているのだろう。

「……おまえのせいで負けたって言われたら」

「団体競技は個人の責任じゃねぇ。全員の責任だ。そう言い返せ」

教師らしからぬ発言にクスリと笑う。

「勝つときは勝つし、負けるときは負ける。一人で頑張ったってどうにもならないときはあるんだ。だからあまり頑張るな」

「頑張らなくていいんですか?」

「おまえはな」

初めていわれた。頑張らなくていいと。

どうにも咲良には負けず嫌いなところがある。

意固地になり気づけば戻る所に戻れなくなるのがしょっちゅうだった。

「ほら、そろそろ教室出ろ。眠いのなら家に帰れ」

教室を出るよう咲良をせかす。

確かに私が出なきゃ教室を閉められないけれど。

ふと気になることがあった。

「あの、先生」
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