確かにそれは恋だった

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「お疲れさん」

コン、と缶コーヒーを机に置く。

「ありがとう。で、体育はどうだった?」

土方は缶コーヒーを手に取り、蓋を開けた。

「二人とも頑張ってたぜ。でも如月は運動が苦手だとさ。雪村と一緒に練習していた」

「そうか」

今年から共学になり、入ってきた女子生徒は二人だ。不安も募る中行われる球技大会。

男子に混じってやるので、教師陣にも不安はあった。

「気が強いな、如月は。男子に喧嘩を売るぐらいには」

「大丈夫だったのか?」

「なんとかな。まぁこれから上手くやっていけるだろ」

「……」

原田が上手くまとめたなら大丈夫だろう。

土方も、初めて如月を見た時に気が強そうだと思った。

入試試験の面接。如月は忘れているだろうがあの時、土方が面接官だった。

――風間千景と同じ学校に入りたかった。この学校に入学したいから受けました。それだけでは駄目ですか?

「確かに気が強いな」

机に置かれている一つの紙。

咲良が出した生徒会への入部届けだ。

この学校に入るには生徒会に入らないといけないと聞いた。

「……これ以上詮索するのもがらじゃねぇな」

「ん?」

「なんでもねぇ。さっさと仕事に戻れ」

はいはいと言って原田は自分の机に戻る。

球技大会が終わればテストだ。土方は各クラスの授業の進み具合とテスト範囲の確認をした。

  〜

「あー……どうしよう」

ある日の生徒会室で、咲良は悩んでいた。

「球技大会嫌だ……」

筋肉痛で体が動きにくい。

男子達の足を引っ張るわけにはいかない。

(全員の前で見栄張ったんだから、ここで失敗したら馬鹿にされる)

苦悩で頭を抱える咲良を、天霧と不知火は心配そうに見ている。

「そんなに気にすることか?」

「如月さんにとっては死活問題なんだろう」

ただ一人、全く気にしていない男がいた。

「馬鹿らしい。どうせ出来もしない癖に大見得を貼って痛い目を見ているのだろう」

「風間ぁ……」

(くそっ。否定できないのが悔しい)

「練習はしているんですから、迷惑になるようなことにはならないはずです」

「そんなことをしたって、何も変わらんぞ」

時折、風間の全てを見通すような物言いに腹が立つ時がある。

だが最終的には、いつも風間が正しいのだ。

「……じゃあどうすればいいんですか」

「知らん。俺に聞くな」

(コイツ……)

振るえる拳を必死に押さえ込む。

どうせ答えなんてくれないとは思っていたがやはり腹立たしい。

「はぁ……」

また咲良は頭を抱え込む。

頭を抱える一人の少女と、全く気にせず本を読む生徒会長。

天霧と不知火は思わずため息をついてしまった。
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