確かにそれは恋だった

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「なんだ」

「先生は、どこまで知っているんですか」

何を、とは聞かなかった。だがなんと答えればよいか悩んでいるようだ。

「……全部、と言ったら納得するのかおまえは」

「いえ。ただ、聞いてみたかっただけですから」

「そのためにここに来たんだろ。ゆっくりやっていけばいい」

(やっぱり全部知ってんじゃん……)

変わった人だ。このような教師は初めて見た。

厳しいだけの教師は中学にもいた。土方は正しい厳しさを持っている。

(この人のクラスに入れたのは、運が良い)

「ほら、出ろ」


いよいよ球技大会当日。咲良は大忙しだった。

各クラスの体育委員からの得点表を貰い、それをパソコンに打ち込む。壁に貼ってある得点表に書きに行く。の繰り返しだった。

(風間の野郎……さぼりやがって)

「得点記入お願いします」

「はい!」

そうこうしている内に自分のクラスの対戦時間が迫っていた。

「私達がやりますから、如月さんは行ってください」

「ありがとう、天霧さん」

渋々やっている不知火を置いていくのは不安だが咲良にも試合がある。

もう少し人数が増えたら良いのに。

今後の課題である人数不足を恨めしく思いながら咲良は千鶴達の元へ向かった。

「咲良ちゃん、今から円陣組むんだって」

「円陣? やるのは初めてだな」

果たして私なんかが入ってもいいのだろうか。そう思ったがクラスメイトは咲良が円陣の輪に入っても何の反応も示さなかった。

(……気にしすぎか)

「A組ファイトー」

「オー!」

よく競技の前に円陣を組むのを見るが、確かにこれはやる気がでる。

「頑張ろうね、咲良ちゃん!」

「そうだね」

体格差というものはどうしようもないが、やれることはやろう。

ホイッスルが鳴り試合が始まる。

A組が先にボールを取りゴールへ向かう。

運動部らしき相手が先を通すまいと道を塞ぐが、なんとか他にパスをつなぐ。

「如月さん!」

「え、うおっ」

まさか自分に来るとは思わず動揺した。

一気に敵チームがこちらに向かってくる。

(誰かにパスするかそれとも……)

頑張って走ればすぐにゴールだ。奪われそうになったら誰かに回せばいい。

「……よし」

一心不乱に走りだす。ボールを見ずに走るというのは、中々に高度な技だった。

もちろんゴール前には人がいる。

咲良は阻止される前にシュートを放った。

あの授業の日のように、ボールは綺麗な弧を描き見事ゴールに入った。

「よっしゃ一点ゲット!」

「如月さんすげぇ!」

「咲良ちゃん、やったね!」

「う、うん。まさか本当に点取れるとは思わなかった」

困ったように笑う咲良に周囲はどよめいた。

(如月さんが笑った……)

(苦笑いでも可愛い)

(よく見れば如月さん美人じゃないか……?)
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