本棚〜短編〜

□宴の中で
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吸い込まれそうな星空の下、とある海賊船で大きな宴が開かれようとしていた。

「新しく家族になったエース、そして元スペード海賊団の面々だ!グラララ。
新しい家族に乾杯ー!!!」

「「「カーンパーイ!!!」」」


「ホラ、エース!お前も兄弟達に一言ぐらい挨拶しやがれっ!」

白ひげ…いやオヤジにそう言われ俺は、
「エースです。以後お見知りおきを…」
ペコリと頭を下げた。


そうココは、四皇の一人。
エドワード・ニューゲート率いる白ひげ海賊団。

今日から俺はここの家族になった。


挨拶が終われば、もうドンチャン騒ぎ。
俺は口に詰めるだけご馳走を詰め込み、隊長達からは酒を浴びるように飲まされた。



時間はあっと言う間に過ぎ、一息ついたところで騒ぎから一歩離れた所に居る女に気が付いた。

宴を優しく微笑みながら見つめるこの女は名無しさん。

俺がオヤジ挑みまくっている時に、たまにオヤジのかわりにブン殴ってきた女だった。
名無しさんはかなりの古株らしく、背中まで伸びた黒髪が風になびいて大人っぽい。
細っせぇ体の癖にパンチは桁違いに重い。
かなりの実力を秘めているんだろう。
現に1度も俺の攻撃は当たらなかった…。

「負けっぱなしは性に合わねぇ!」

俺は少しもつれる足で名無しさんの元へ向かった。


「名無しさん!」
と肩に手を回すと、少し驚いた様子で
『あら?エース。主役がこんな隅っこに来ちゃダメよ?』
何喰わぬ顔でショットグラスを傾ける。

「名無しさんと勝負したくてよ〜。」

『ん?勝負って?私にまた、ぶん殴られたいの?』

言葉とは裏腹に優しくて、キレイな笑顔だ。

あぁ、母親ってのがいたらこんな顔するんだろうなって思ったが、その言葉は胸の奥に閉まっておこう。


ぜってぇ、ぶん殴られる……。

初めて殴り飛ばされた時は、
「そこどけっ!ばばぁ!!」
って叫んだ瞬間だったし…。

母親…。

まぁ、さすがにそこまで歳は離れていなさそうだが。

『エース?』

名無しさんは、そんな意識を飛ばしている俺に首をかしげている。

「喧嘩じゃ今は勝てないから、これで勝負だっ!」

そう言って名無しさんの前にドンっと酒樽を置いた。

『え〜、私お酒飲み過ぎると怒られるのよ。』
と困った様子で目を向けた先に居たのはマルコだった。

そのマルコは、俺んとこから着いてきて今日からナース見習いとなったサリーと甘い雰囲気で酒を飲んでいた。

『ん〜、ストッパー役がいないなら…。受けて立つわ!』

そう言うと、酒樽を傾け勝負が始まった!

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