本棚〜長編〜

□infinite
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―ガチャ―


扉を静かに開く。


しかし、今は誰もいなかった…。


6人部屋の1番手前が小阪君が使っていたスペース。


そこに大きなカバンが1つ置いてあった。


これがサッチの言っていた、野菜や果物だろう。


少し辺りを見渡すと、いつもハンモックの上にあった、小坂君の元の世界から一緒にやってきたカバンはそこには無かった。


しかし、身につけていた衣服なんかは残されたままだった。


記憶からも消されていない、こちらで生活していた痕跡もあるし、まだ微かに香りも感じる。


彼は確かにここに居た。


その証がたくさんある。


だから、もし私達が元の世界へ戻ってしまっても、きっと同じことなのだろう…。



いっそ私達が帰れば、皆の記憶からなくなってしまえばいいのに…。



そんな事を考えながら野菜袋を持ち上げると、手が滑って、数個の野菜や果物が部屋の奥へと転がっていってしまった。


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