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草陰から飛び出してきたモールモッドは

生身の名前とぶつかった後

奇妙にカサカサと動き回っていた

恐らく、自分を探しているのだろうと考える名前

幸いにも小柄なためすっかりと遊具の陰に身を隠せた

この様子だと思っていたより時間を稼げそうだと安堵のため息をつく

体力の消費を最小限にと考え、ゆっくりと座り込んだときだった


ヴーヴーヴー


制服のポケットに入れていたスマートフォンが大きな音と共に震えだした

先ほどの警報よりも恐怖を感じるその音に

モールモッドの不気味な目がこちらを向いたことがわかった



「なんてツイてないの!」

小さな悲鳴のような声を出し慌てる



同時に一直線にこちらへ向かって来るトリオン兵をみて

考えるより先に気怠い身体は動き出していた



アスレチックという障害にうまく身を隠しながら

強力な斬撃を躱し、より遠ざかるよう走る

その足はもう限界に近く痺れさえ感じる

この公園から出よう、決心し今ある精一杯の力で土を踏む



暴れるモールモッドが斬り倒し吹き飛ばしたタイヤの遊具

そのゴムの一部が名前の脚に直撃する

さほどの衝撃ではないがひ弱な生身の少女には

倒れこむほどの風圧も併せ持っており

身体の浮遊に大きなダメージを受ける

倒れこむ名前に即座に反応したトリオン兵は

迷いなく立ち込める砂埃へ飛び込む

そこに見えた濃い影を目に捉えると

大きな鎌を容赦なく振り下ろした

ザクリと布が破れる音が確かに鳴った



しかしそこに、人間の姿はない

鎌に引っかかっているのは女子高生の制服のブレザー

視界を妨げる砂埃の中、咄嗟に上着を脱ぎ捨て

これが囮になればと賭けたことが吉と出た



視界が綺麗になった後、再びカサカサと動き回るトリオン兵の音だけが響いていた



「助かった…」



公園の入り口にある門の表側に背を預け

ふう、と息を吐く名前の脚はもう力が入らない





しかし、今日の名前は本当にツイてなかった

安堵のため息のすぐ後

自分を何度か吹き飛ばしたモールモッドとは別のものがどこからか現れ

名前が背中を預ける門へ一直線に突っ込んできた


「うわあ!!」


簡単に破壊されてしまったコンクリートと共に吹き飛ばされた名前

今日は何度吹き飛ばされればよいのだろうか

戦えないことへの情けなさともどかしさ

無防備ということの恐怖を見せつけられた気がした



アスファルトへ叩きつけられる覚悟を決める

痛いだろうな、冷たいだろうな

大きな衝撃の前は動きがスローに見えるとよく言うが

まさに今その状態に陥っていた


近づく粗いアスファルト

痛みへの恐怖で、ぎゅっと目を瞑った



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