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「名前ちゃんって何者なんですかね…」

「弧月の扱いもかなり熟練しているようですね」

「あいつのパラメーターは未だによく分からないが、東さんが認める程だ、実力者ということは間違いないだろうな」



画面の中に映る久しぶりの姿は

本当に自分たちの知っている彼女なのかと疑うほどにたくましかった

しなやかな身体が力強く剣舞する様子に目が離せない





上空からの素早い斬撃を後方へ高く、身体を翻し躱す

着地の直前に放つハウンドで相手の視線を自分から遠ざける

爆発で生じた煙が濃いうちにできるだけ北へと急ぐ

イヤホンから聞こえる称賛が自分をどこまでも強くしてくれる気がした



「本当、いつからこんなに上手く戦えるようになったのかしらね」

「月見が知らないだけかもしれないぞ」

「あら、それは心外」

「ふふふ」



兄貴、姉貴分の後ろをくっついて離れなかった当時は

揃っての戦闘ならばその力を大いに発揮できていたものの

一人になったものなら嘘のように脆弱な少女に変わってしまう

その様子を知っている二人だからこそ

名前のたくましい成長が嬉しくて仕方ない




あの頃とはもう違う、自分は変わったのだ

戦いと孤独への恐怖が自らの全てを支配したあの頃とは違う



「泣いているだけなんてもう、嫌だから」



背中を守ってくれる、守らせてくれる

絶対的な信頼と自信を築き上げてきたことに気付くのが遅かったのかもしれない



怯えて震えるだけの自分が大嫌いで赦せなかった

そこで立ち止まったままの自分を奮い立たせた実兄の存在が頭をよぎる

笑え、と言った兄に誓った強固な意志

いつだって独りじゃないと教えてくれた仲間を信じる気持ちが名前のリミッターを解除した

名前に宿るのは温かな安心

恐怖で何も見えなかった心には負の存在など一欠片もない



「一人で走ってても、一人じゃないもんね」



二人の耳に届く柔らかな声色

例えこの広い戦場を駆けるのはその身一つだとしても

自分は孤独じゃない、名前の口からやっと聞くことのできた自覚に

鼻の奥がつんと痛みじんわりと広がる



「そうよ、私たちがいる、だから安心してベストを尽くして」

「名前よく言った、お前はもっと強くなれるぞ」



ありがとう、小さく呟く声が届いたかはわからない

名前のハウンドをうまく撒いた小南が

再び迫り来るのがわかり、角度を変え奔る

細腕からは想像もつかない豪快無比な斬撃で

目の前の全てを斬り倒し破壊する風圧に

身体が浮遊しそうになるのをぐっと地を踏み、耐える



"接続器ON"



二つの刃が連結され形態を変える

強剛な怪物をも一撃粉砕した戦斧が

たった一本の弧月をもつ少女へ振り降ろされた



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