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近頃の名前は、心臓に悪い

自分たちに信頼を寄せすっかり安心してくれるのは心から嬉しいことなのだが

その信用から生む無防備さが皆にとって生殺しの状態なのだ

自分たちだって誰に対しても優しくしたいわけじゃない

相手が君だからだよ、真っ直ぐに伝わればどれほど楽か

冷えた仏頂面が愛の欠片も感じさせない二宮は

名前がいるだけで別人のように柔らかな微笑みを見せ愛おしそうな目で彼女を見ている

女性という存在を避け通ってきた辻だって

名前にだけは一生懸命会話を繋ごうとする

彼女の辻への理解と包み込む笑顔が彼の心を開いたのだろう

誰とでも仲良くそれなりの距離で心を通わせることのできる犬飼は

名前を前にすればポーカーフェイスも剥がされてしまう

予測の出来ない彼女の表情ひとつひとつに魅了され思考が追いつかない



自分たちをこれほどまで惚れこませておいて

そんな事実などつゆ知らず、純粋無垢に笑う名前



そんなことを考えているまさに目の前

今日もご機嫌麗しゅう我らが天使



「この間ね、友達と澄晴くんの話になって」


偶然二人しかいないこの空間で

自分だけに向けられる大好きな笑顔


「うん、何の話?」


緩む頬は無意識のもの


「ちゃんとご飯食べてるのかなって話してたの」

「何それ!」


おかしな発言にがたっとバランスを崩しそうになる


「だってほら、すごくスタイルがいいから」


至って真面目に、熱弁する彼女も愛おしく思えて仕方ない


「二宮隊の皆さんは普通に歩いてたらモデルさんと間違われちゃうねって」


背も高くて、お顔だって綺麗だし


ニコニコと自分たちを褒め続ける名前に頬が熱くなる


「ちゃんと筋肉だってついてるんだよ」


拳をぐっと握り強調する二の腕

彼女の好奇心を見くびっていたと後悔した


「ほんとだ、男の子って感じで素敵」


「っ!」


嬉しそうに触れ、男の腕の感触を楽しんでいる

触れられたところが熱を帯びる

このままでは自分ばかり彼女の天然にやられている気がして

ちょっとくらい意地悪をしても罰は当たらないだろうと正当化する


「そうだよ、俺は男なんだから」


腕に触れる名前の白く柔らかな手をぐっと引き

もう片方の手で華奢で締まった腰を引く

自分の胸の中にすっぽりと収まる小さな彼女


「す、澄晴くん?」


困ったように見上げる瞳はうるりと揺れる

頬は赤く染まり、申し訳なさそうに名前を呟く


「無防備にしてると、襲っちゃうよ…?」


熱のこもる頬に手を添え、いたずらに囁けば

かあっと更に赤くなる顔にご満悦の犬飼

反論の声が聞こえないが、了解ということなのか

彼女をみれば、言葉を発せられないほどに沸騰していた

突然みせた、彼の男の部分に動揺が隠せなかったのだろう


「い、意地悪…っ」


ようやく出たと思えば悪態

花弁のような唇を少し尖らせ呟く表情は

思考停止してしまうほどの破壊力

やっぱり彼女には適わないのだ、と思い知らされた


「その顔、反則〜!」

「うわあ!」


やけになった犬飼にぎゅうぎゅう抱きしめられ振り回されたのはこのすぐ後




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