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今日も迷うことなく本部の長い廊下を歩き進める

足取りは相変わらず軽く、鼻歌を奏でてしまいそうな気分

今日の差し入れは、母が持って行きなさいと

満面の笑みで持たせてくれた"いいとこのどら焼き"

きっとみんな喜んで食べてくれるだろう

そろそろ見える部屋の前で、歩くスピードが少し上がったときだった

「えっ!?ひゃあ!!」

躓いた何かによって視界が激しく揺れ

足元を見ていないことに後悔した

「と、当真くん!」

「よお、名前〜随分とご機嫌じゃねえか」

前のめりに倒れた名前を片腕で抱きとめ

思わず手離したどら焼きの箱も片手にきちんと収まっていた

「ごめんね、足元みてなくて」

「いや、俺が足引っ掛けた」

「私の謝罪を返してくれるかな」

「まあ、そう怒るなって〜」

ご機嫌に歩く名前をみつけ

自分の存在を示そうと手荒な方法で引き留めた当真

学校は違えど、同じ狙撃手仲間ということもありよく話はする

名前はその度、当真にからかわれいいおもちゃになっているのだ

「なんつーか、最近すげえ雰囲気変わったよな」

「何それ」

「それはそれでいいんだけどな」

手に収まるどら焼きの箱を眺め、ふーんと声を漏らす

「あ、そうそう、それもありがとうね」

落とさないでくれたことにお礼を言い手を伸ばす

渡すまい、と頭上に箱を掲げ名前を躱す

無駄な抵抗はしない、とため息をつく名前にニタニタと笑う当真

「何かに浮かれてんのか?」

「え?どうして」

素直に疑問を浮かべる名前はやはり可愛い

しかしその可愛さが当真の苛めたい気持ちを倍増させる

「最近、すげえ可愛くなったなーってよ」

「えっ、そ、そうかなあ」

「好きな男でもできたか?」

「えっ!?そんなんじゃないって!本当に!」

顔を真っ赤にし慌てふためく名前が面白い

「へ〜?」

「も、もう!当真くん!か、返してその箱!もう行かなきゃいけないから!」

ぐーっと背伸びをし催促する名前の軽い肩を壁に向かいトンと押す

つま先立ちの名前はいとも簡単にバランスを崩し壁へ身体を預けた

そこに追い込むように当真が片肘を壁につけその手をぽんと小さな頭に置いてやる

彼の長い脚が名前の動きを制限するようで

ぐっと縮まる距離に赤面する名前は逃げ場がない


「当真くん…!?」

「俺を振り切ってどこに行くってんだ?」


余裕の表情で距離を詰める当真だが

自分を見上げる潤む瞳に怯みそうになるのを堪えるので必死だ


「当真、やり過ぎだぞ、名前も困ってるだろ」


落ち着いた声に振り向く二人

ちぇーっと唇を尖らせる当真と

助かった、と安堵の顔色の名前

「鋼くん〜!」

当真の腕をするりと抜けうわあと駆け寄れば

クスリと笑いよしよし、と慰めてくれる

「鋼には懐くのによ〜納得いかねえ」

「日頃の行いだろう」

ぶーっと不満そうな表情の当真は

観念したように手に持つ箱を名前へ返す



「鋼くん、当真くんをよろしくね!じゃあまた」


ひらひら手を振り、天使の微笑みをみせる

すぐそこの、二宮隊の作戦室へ入って行ったところをばっちりと見届けさらに不満の声を漏らす当真


「俺が知らないうちに更に可愛くなっちまって…女ってのはそういうもんなのか」

「さあな、俺は名前が笑ってるならそれでいい」

「お前、男前だな」

落ち着きのある声で宥める鈴鳴の菩薩に

自然と納得する気持ちになってしまうのが不思議だと感じる当真だった


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