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「おはよう」

「…おはよ」


ついにやってきた検査当日

初めてみるお互いの私服姿に緊張しつつ同じ道を歩き出す

「検査って何するんだろう」

「簡単なものだよ、大丈夫」

不安げに呟く名前を安心させたいと思いつつも

自分もどのような試験を行うのかわからないため無責任なことは言えず、大丈夫と言うことしかできない

その辻の言葉を心から信じみせた笑顔に心臓がうるさい

どうかこの純粋な心が少しでも救われますように

その一心で本部までの道を小さな歩幅で歩いた


「…ここが本部?」

「そうだよ、今本部長が来るはずだから」

遠目からしか見たことのないボーダー本部に驚く

想像以上に大きく、立派でそれだけで緊張してしまう

「ほ、ほんぶちょう!?」

「俺達の上官にあたる人だけど、そんなに緊張しなくて大丈夫だから」

顔を青くして、大層なお方をお呼びしてしまったと慌てる姿が面白く、口角が上がった


「すまない、待たせたな」

そうこうしているうちに、出迎えにやってきた本部長の忍田

辻の後ろに隠れている小さな存在に近づいてようやく気付いた

彼が女の子を連れてきたということにも驚きだが

姿を見せたその少女の可憐さと儚げな佇まいに息を呑んだ

「は、初めまして…苗字名前、と申します…」

照れているというより、怖がっているような声

震える鈴の音に年甲斐もなくドキリとしてしまう

「私は本部長の忍田だ、君の話は辻から聞いているよ、私たちは決して君を傷つけたりしない

だから安心してついて来てほしい、よろしく頼む」

真っ直ぐな声は名前の心にしっかり響いた

握手を求めない彼の気遣いに安心し心が温まる

「こちらこそ、お忙しいところありがとうございます…よろしくお願いします」

ぺこりと身体を綺麗に折る名前に育ちの良さを感じる

不安が拭われたような声に安心し、さあと促しいよいよ基地の中へ入って行く

本部長が基地の廊下を歩いているということ

そしてその後ろをついて歩く美男子と美少女の姿は

途轍もない存在感を発揮し、周囲からの視線をこれでもかと集めた

「つ、辻くん…」

怖がるような呟きが聞こえ守ってやりたい気持ちに駆られた

背中をさすってやることくらいできればいいのだが

そういう行動に出ることが出来ない自分がもどかしい

また、彼女がそれを望んでいるかもわからないため尚更に何もできない

自分から触れることができないのなら、と

ん、と腕を彼女に控えめに突き出してみる

わかりにくい辻のアクションを察した名前は

恥ずかしそうにしながらも、きゅっと

辻の服の袖を掴んでみせたのだから、仕掛けた本人が一番驚いた

彼女に触れるか触れないかの選択肢を与えればいい

そう思いついた辻の発想は名前にとって最適なものであった

少し恥ずかしい気もしたが、自分に信頼を寄せる彼女の姿に感じたこともない愛らしさを覚えた


「さあ、ここだ、辻も一緒に入ってくれ」


あっという間に辿り着いた部屋の前

ばっと離す手に寂しくなったが、真っ赤な顔の名前をみてまた頬が緩む

「よ、よろしくお願いします」

「失礼します」

二人の入室後、続いて忍田も部屋へ入り扉が閉められた



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