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きっと今日はどこに行っても皆に心配される

なんだか自分が恥ずかしい格好をしているような気がして

急に照れを感じ始めた名前は周りの目を気にする

早急にトリガーを解除して帰宅しようと思いたったが

朝、母親に言われた一言を思い出し再び頭を悩ませる


「メンテナンスが終わるまでトリガーは解除しちゃダメよ?」


にこりと首を傾げる母に大きく頷いた回想が弾ける

なんでも、トリガーの起動中にしか手入れができないというシステム上の都合だと説明され

その道のプロの母親と雷蔵の言葉に大いに納得したのだった

「そうだったああ!」

頭を抱える名前に行き場はない

「ん、名前か」

早速聞きなれた声が聴こえ、逃げ出したくなった

「あ…二宮さん」

「なんだその格好」

東と同じ言葉は明らかに違う意味に聞こえる

低い声にビクリと肩が震えた

「あ…その…今日は、えー」

「ったく…」

迷うことなく自身の隊服であるスーツのジャケットを手早く脱ぎ

目の前で顔を青くし冷汗をかく愛しの存在にそっとかける

今日二回目の借り物の温もりに包まれる名前は顔面蒼白から一転、ふわりと頬が染まる

彼の紳士的な対応もそうだが、ジャケットを脱いだことにより

普段とは違う装いに見える二宮の姿にドキリとした

黒のベストから伸びる白のシャツに包まれた腕に見惚れる

いつも自分を優しく包み込む大好きな腕なんだ、ときゅんと胸の奥が鳴る

「どうした、行くぞ」

名前の様子に満足気な二宮がそっと背中に手を添え自分たちの領域へ導く

終始無言で辿り着き、作戦室へ入れば沈黙の室内

まだ犬飼らはいないのだ、と理解すると妙に緊張した

「ほら座れ、話はそれからだ」

隣にそっと腰を下ろすと横からの視線が痛いほどに感じられる

気付かないふりをして俯く名前の耳は真っ赤だった

彼女の様子とは裏腹に若干の不機嫌さを滲ませる二宮

「追い剥ぎにでもあったか?まあ仮にもそうならそいつの命はないが」

「いや、そんな物騒なものではないですから、どうか怒らないでください」

素早いつっこみに、そうか、と納得する

「今日は、私の隊服の手入れをするらしくて…」

「ほう」

だからどうした、と首を傾ける二宮に

至って真面目な様子の名前は言葉を続ける

「母曰く、トリガーの起動中じゃないとシステム上都合が良くないみたいで…終わるまで解除しちゃだめって言われたので…」

困った様子で尻すぼみになる名前に吹き出す二宮

何がおかしいのかわからない名前は困惑する

肩を揺らして笑う姿さえ美麗な彼に鼓動が更に速まる

一通り笑い終えたところで、淡い色の彼の瞳が名前を真っ直ぐ見つめる

「いいか、名前…ちょっと来い」

「えっ、ちょ…っと!?」

何度目か分からない彼の背中からの温もり

羽織ったままのジャケットごと抱きしめられる

胸の下にまわる白いシャツを纏った腕に体温の上昇が止まらない

「そんなメンテナンスあるわけねえだろ」

「へ!?」

耳元で笑いを堪えながら呟く二宮に間の抜けた声が出てしまった

「メンテナンスにトリガー解除云々は関係ねえよ、お前まんまと母親に騙されたな」

ここでまた耐え切れなくなった二宮が

名前を抱きしめる腕の力を強めまた身体を揺らす

バカだなほんと、おもしれ

ぽかん、と口が開いたままの名前をよそに

彼女の純粋さと素直さが愛しくて仕方ない二宮がよしよしと慰めるように名前を撫でる

「お母さんめ〜…!」

ばっと両手で顔を覆う名前は

それはそれは、恥ずかしそうに唸っていた

「解除してみろ、何も問題ないはずだ」

「…はい」

その後、特に何事も起こらないため、二宮を信じて正解だった

またしても母親の大嘘にしてやられた名前は脱力すると先ほどより鮮明に感じる熱

名前と同時に生身に転身した二宮に未だ背中を抱きしめられている状況に気付きハッとなるが

抱きしめる力を強める腕からは逃げられそうもない

「俺に感謝して、もう少しこのままでいろ」

相変わらずの悪態だが優しい声色と本物の温もりに

こくり、と頷くことしかできなかった

耳元にそっと唇をよせ愛おしそうに小さな体温を抱きしめれば

二人だけの甘い癒しの時間が始まりを告げた



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