nnmy

□31
2ページ/3ページ




「…い、…おい…!名前!!」


一瞬気を失いかけたが激しい呼びかけに急速に意識が覚醒した


「あっ、二宮さん…」

「あ、じゃねえよ!お前こんなとこで何してやがる!」


そういえば自分は化けるトリオン兵にまんまと化かされ、危うく命を落とすところだったのだ

自身の愚かさを痛感し、申し訳ない気持ちでいっぱいになる

でもそんなことより、膝をつき自分の肩を抱きながら

目の前で血相を変え怒る彼の血の通った愛情に涙が溢れて止まらなかった

「うっ…うう…っ」

「な、泣くな、怒っちゃいねえよ」

突然の涙に動揺を隠せず、怒りから一転

あたふたとなり、彼女の冷めた頬に手をあてると

空からとは別の温かな雫が確かに流れていた

「よかった…」

彼女が呟いた言葉の意味が理解できずにいると

ぐしゃぐしゃで途轍もなく綺麗な微笑みが二宮を真っ直ぐ捉えた


「とっても、温かい…」


二宮の大きな片手に自身の指を絡めるように握ると

ずっと欲しかった温もりにまた涙が溢れる

「名前…」

雨にうたれ濡れるところまで濡れきった様子は

少々可哀想にも見えたが、そのハプニングさえも

彼女の魅力を最大限に引き出すシチュエーションになってしまうのだから恐ろしい

名前の安心したような笑顔を確認すると

そっと抱きよせ、すっかりびしょ濡れの髪の毛を撫でてやる

「なぜ反撃しなかった」

責めるわけではなく、優しく問いかける

「だって…二宮さんの姿でいられたら…傷つけることなんてできません」

以前の戦いで自分がそうだったように

名前も同じ体験をしたことに驚く

「そうか」

それ以上は何も聞かず、抱きしめる力を強める

「偽物だってわかっていても、二宮さんをさいごに見て死ねるなら…それでもいいってさえ、思ってしまいました」

自嘲気味に笑う名前の額に思い切りデコピンをしてやる

「い、いったーい!」

「痛いって思うならもうそんなこと言うな」

"痛み"は"生きたい"証なのだから

はーい、と二宮の胸に頭を預ける名前はいつもの愛らしい天使

「俺を前にして、死んでもいいなんて、そんなこと二度と言えないようにしてやる」

ここで生身に転身した二宮に焦る名前

「に、二宮さん!濡れちゃうから!」

慌てる名前に、ふっと笑う

「お互い様だろ」

本物の温もりに変わった感触に体温が上昇する

お互いびしょ濡れな姿が、可笑しくなって笑う

優しい時間が流れ、互いに目が合うと

どちらからともなくゆっくりと唇が重なった

初めて触れた互いの感触に恥ずかしさが溢れる


「二宮さん…大好きです」


腕の中で穏やかに呟く名前に

返事をする代わりに今度は深く口付けた


「へっくしゅん!」


熱い吐息の中、雰囲気を台無しにした彼女の盛大なくしゃみさえ愛おしい


「続きは帰ってから、だな」


優しさに溢れる二宮の笑顔に頬が染まる

繋がった気持ちが大きな幸せを生み出し

雨であることを忘れてしまうほど身体は熱をもっていた


「匡貴さん、だーいすき!」


思い切り彼の温かな胸板に抱きつくと

一瞬驚いたようにしたが、しっかりと強く抱きしめてくれた


「覚えとけよ…?」


耳元で甘く囁かれた言葉に違う意味で気が飛びそうだったが

彼と続く幸せな時間が何よりも嬉しくて仕方ない名前は

すりすり、と顔をすり寄せまるで猫のように彼に甘えるのだった

二人の愛はまだ始まったばかり

先が思いやられるほど互いに惚れこんでいることを二人はまだ自覚していない

「匡貴さんは、私のこと好きですか?」

「ああ、愛してる」

「っ…!?」

「聞いといて照れんなよ、可愛いな」

二宮邸に到着するまでの車内

すでに蕩けきる空気が身も心も溶かしてしまいそうなほどに熱く、甘かった




end
***

nextあとがき
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ