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今日はツイてない、まさか雨が降るなんて

こういう日に限って新聞もテレビも携帯もみていない

あの道は雨が降るといつもより混む

チ、と小さく打った舌打ちは雨音で掻き消された

苛ついていても仕方がないので

降参です、とも言わんばかりにのろりと車に乗り込む

いつもの道を走り進めると信号に捕まる

はあ、と息を吐いたとき

斜め前のあたりにしゃがみ込む後姿

傘の色からして女性だろう

偶然にも視界に入ったため、気になって

目で追い信号待ちの退屈をつぶしていた

傘がスッと立ち上がるとスラリとした白い足と紺色のソックスが目に入る

どうやらこの辺りの女子高生らしい

立ち上がったはいいが、その場に立ち尽している

その足元にはラッピングされている七色がみえる

雨に打たれながらも力強く咲く綺麗な花々だ

花壇でもないただのアスファルトに置いてある花となれば

きっと誰かに供えているものなのだろう

急にその後姿が切ないものに見えてきたとき

女子高生と思われるつま先がこちらを向いた



「っ…!」



視界は決して良くはないはずなのに

なぜかその彼女だけがはっきりと映った

哀しみを体現したかのような憂い顔に

胸がきつく締め付けられる感覚に陥った

苦しく悲壮な顔のはずなのに、どこか人を惹きつける

そしてなぜか、自分が守ってやらねば

という変な使命感にまで駆られたのだ

完全に思考が迷い込みそうなとき

後方からのクラクションで引き戻された

気付けばその彼女もそこにはいなかった




不思議なことに"また会える"と確信できた




1射手、二宮匡貴は突然の運命の出逢いに

なぜだか少し心地の良い感覚を覚えた




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