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初めて会話を交わして以来、二宮の脳内は名前一色

あれから本部の廊下で何度かすれ違うも

軽く挨拶をする程度の、そんな仲だ

もう一歩踏み込んで、会話までが遠くもどかしい

コミュニケーション能力ピカ一の犬飼さえ

名前を前にすると、話し掛けるのを躊躇う

決して話し掛けにくい雰囲気ではないのだが

見ているだけで満足、という言葉が一番適切なのかもしれない

いや、それでいいのか、良くないに決まっている

今日一日でそんな自問自答を何度しただろうか


はあ、と思わずついた溜め息ももう数えていない





「あれ、名前ちゃんだ!」


わっと嬉しそうに小さく声をあげた犬飼

"名前"というワードで跳ね上がる心拍数

溜め息を呑み込み、勘付かれないよう視線を泳がす

本当に、最近の自分は自分らしくない

視線に捉えた先には急ぎ足の彼女

挙動不審で怯えたような様子に心配になる




「名前?」



自分たちの後方から聞こえた声に

不安げな表情が一転、満面の笑みをみせ駆け寄る

そんな顔にさえドキリとしてしまう


「春秋くん!た、助けて」


声の主、東に駆け寄るとまた青くなる陶器の肌


「またか」


呆れたように溜息をつくと

名前の低い頭にポンと手を置く

同時に聞こえた二宮の歯ぎしりに自分まで青くなりそうだと思う犬飼


「ここにいましたか」


名前を追ってきたのはメディア対策室長の根付


「根付さん、いい加減諦めた方がいいですよ、嫌がってますし、そろそろ俺も本気で名前を庇います」


あくまで落ち着いた口調で話しつつ名前を背中で匿う東


「名前さんほど良い人材はいないのですがねぇ」


まあいいでしょう、東くんを敵に回すと圧倒的不利ですし



また交渉しに来ると言いあっさり引き返した根付

その後姿がみえなくなるのを確認した名前は


「ありがとう春秋くん!」


それはもう嬉しそうに安心したように

自身を庇った背中に思い切り抱きついた




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