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「今日も綺麗なお花、持っていくね」

自分だけの声が反響する玄関で

いつものように、いってきますを言う

寂しさはない、笑顔で写る最愛の兄の写真が

名前に、いってらっしゃいを言っているように思えるのだ



今日は、あの日と同じ雨の空

雨の日は兄が帰って来ている気がして

さいごに言葉を交わした場所へ足を運んでしまう



兄が目の前からいなくなって

その原因が得体の知れない怪物で

怪物からみんなを守ろうと

自ら決めてボーダーへ入ったはずなのに

東や太刀川らと死ぬ物狂いで特訓しスキルをあげてきたはずなのに



先日の大規模侵攻、最近ではガロプラの急襲

戦えたはずなのに戦えなかった

戦おうとしなかった、というほうが正しいのか

ただただ警報に怯え自室で震えていることしかできなかった

そんな自分が嫌で嫌で仕方ない

東や太刀川は、無理に戦うことはないと

温かい言葉を掛けてくれるが

その優しささえ名前には辛かった



守られてばかりじゃダメなんだ



今日の雨は一層、強く感じ

それは兄の激励にも思え、名前を奮い立たせる




考え事をしているとあっという間に放課後は訪れるもので

いつもの花屋へ向かい今日のプレゼントを選ぶ

普段と少し変わったものを手に取ったため店員は少々不思議がったが

たくさんの花を持つ名前がとても画になっていて

思わず見惚れてしまい、何も聞くことができなかった




ピンク色のゼラニウム



花言葉は"決意"



いつもの花束の中心にそっと添え

声の届かない兄へ心の中で固く誓う




私は、みんなを守りたい


いえ、守ってみせる




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