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「なんだかご面倒をかけて…すみません」


乗せられるがまま乗せられた助手席で

申し訳なさそうに謝る名前が愛おしく思える


「気にするな、悪いがこのまま俺の家に行く」


目撃者が自分でよかった、と何度思ったか

に、二宮さんち!?と横で目をまわしている名前にクスリと笑い

休んでいけ、と片手を名前の頭に置く

ありがとうございます、と俯き耳まで赤くした様子に少々の期待を抱いてしまう




想像はしていたがやはり大きく立派な家屋

お邪魔します、と一歩踏み出せば二宮と同じ匂いがした

なんて心地がいいのだろう


濡れている靴下を両足分脱ぎ

裸足で失礼します、と一言断りをいれれば

気にするな、とタオルを持った二宮が優しく微笑む



「とりあえず、こっちに来い」

ふわりと片腕をとられ、連れて来られたのは二宮の部屋

きちんと片付いており、彼の性格が伺える

パタンとドアを塞がれると急に訪れる緊張感

なんだか大変なところに来てしまったと落ち着かなくなる



「あの野郎、風邪でも引いたらどうすんだよ」

ぼそっと小さな声で文句を言いながら

ドライヤーをセットしタオルを何枚か広げる

この人は本当に心から自分のことだけを心配して

ここまでしてくれてるのだ、と二宮の純な優しさに心打たれた


「二宮さん…ありがとうございます」


東や太刀川も本当に優しい、だけど二宮は

優しさのほかに自分への愛情を感じる気がして

それが素直にとても嬉しかったのだ


「こっち来い、身体冷えるぞ」


自分の元に手招きをする彼の頬は少々赤い

それを名前になるべくみられないよう

名前を座らせた後、小さな頭にタオルをかぶせ

乱暴にならないようがしがしと拭いてやる



「ふふふ」

「何が可笑しい」

思わず笑いが漏れる名前

「私、捨て猫みたいだなーって、ふふふ」

まるで自分が二宮に拾われた猫のようだ

そう考えるとなんだか可笑しく思え笑いが止まらない



「ほう…」


一瞬ちょっと悪そうな顔をした二宮は

タオルで名前の髪を拭く手を止める

尚座りながら不思議そうに見上げる名前の両脇に

自身の手を置き、そのままぐいっと引き上げる

身長差はおおよそ30cm、嘘みたいに軽い身体は

トリオン体かと疑うほどだったが

段々と熱を帯びる肌に生身と実感する

引き上げた次は両ひざに片腕を通し横抱きにした



「ひぇえ!」

顔を真っ赤にした名前はもはや抵抗の思考もまわらない

引き寄せられゼロになった距離

普段は届かない二宮の肩口に自分の顔が近いことに

緊張と恥ずかしさでいっぱいいっぱいだ

大人の余裕と言わんばかりに愉しそうに笑う二宮

ふ、とひとつ笑いを零した後

名前のまだ水分を含む前髪にそっと唇を寄せた


「に、二宮ひゃん!?」


このままクタっと首が折れそうなほど

照れてパニックになった名前が可愛い



「俺に拾われた、猫なんだろ?」



そう意地悪く口角を上げる二宮をみて

余計なことは言うもんじゃないと心から感じる名前だった




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